おまけ

「ところで姐さん。忘れてると思うんで言うんですが」

「ん?なんじゃ?今、化粧を直してるとこじゃ、こっちを見るでない」

「はい。見ません。…あの、ですね」

「あれじゃろ?ワインじゃろ?」

「覚えててくれてました?」

「いや。忘れてた」

「・・・。」

「だから、『ところで』のくだりで思い出したんじゃ。今日、飲むかえ?」

「…別にどっちでもいいっす」

ねるな。めんどくさい子は嫌いじゃぞ?」

「…だから、空気っすよ、空気」

「はぁ。。。わっちに空気を求めるほうが無粋ぶすいじゃ」


化粧直しを終え、くるりと振り返った紅葉は、中也の頭を帽子越しに撫でた。


「わっぱ。わっちに付き合え。命令じゃ」

「…承知、いたしました」

渋い顔で答える中也の顔を、満面の笑みで眺める。


いのぉ。」

「やめてくださいって」

「ほれほれ、生ハムとチーズを買うんじゃろ?店に連れていけ」


まだ腑に落ちていない表情の中也が、それでも差し伸べられた手を丁寧に取り、部屋のドアを開けてエスコートする。


「デェト、楽しみじゃのぉ」


紅葉の柔らかな笑顔に、

やっと中也の顔もほころぶのだった。


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闇夜の花 パスカル @pai-sen35

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