第3話 彼と同棲





「お爺様、話が有ります

入っても宜しいでしょうか?」

桜祐が障子ごしに声をかける

「ウム入れ!!」

頑固ジジイの声が廊下に響く


桜佑の後を悠里が付いて入ってきた。

悠里は正座しながら襖を閉めるとまた一礼をした。


厳つい感じで腕を組み、グレーの

ちゃんちゃんこに青い着物を着た

爺様は座布団の上にドッカリと、

腰を下ろしていた。



傍でお祖母様はコカコー〇の

ペットボトルの空を2本握って

ニコニコしていた。



ん?・・あれ?



2人はコー〇が好きなのかと悠里は、

2本のペットボトルを見て、ちょっと

2人が可愛く思えた。



桜佑が悠里を見て座れみたいな

目の流れをしたので

『チッ偉そうに‼』

と、思いつつ隣に座った。


「お爺様、お祖母様

俺達、一緒に住む事にしました。」



「まぁっ桜佑のマンションに

住むの?此処でもよろしくてよ。」

お祖母様は少し弾んだ声をあげた。


「いえ、悠里の学校にも遠いし

今のマンションの前が空いてるので

そこに落ち着きます。」

桜佑は静かな口調で話し出す。



「あらァだったら

桜佑のマンションが良くない?

あのマンションは確か2LDKでしょ。

狭くない?

桜祐のマンションは5LDK

じゃなかった?」



「はい。

一応俺のマンションは、仕事を

する時使うので、友人が来たりした

時悠里の勉強に差し支えたりします

し、マンションは残して置きます。」

桜佑はチラッと悠里を見て答えた。


ウム、

「何れは夫婦になるんじゃから

・・・まあ、いいだろう。

コレで上手く行けば結婚じゃが

良いな悠里、上手く行かなければ

桜佑は見合させる、それは

了承してくれよ‼」


加納一大は念を押す、



「はい、喜んでそう致します。」

悠里は元気よく答えた‼


ん?喜んで!とは?

ハァ爺様は少し不機嫌そうに

悠里の顔をガチで見た。


桜佑は慌てて

「いやいやそうなった時は

と言うことです。

な‼な‼悠里。」



「勿論で御座います。」

桜佑とは違い慌てず静かに悠里は答えた。



「そうか‼

了承したとみなして良いのだな!」



「はい。」



「ふむ‼

ならば好きにすればよかろう。

もし子が出来た場合は

三上の、方で引き取るとゆう

約束は出来ておるのだ


加納は一切関わらぬと言ってある。

そこは大丈夫か?


そこをよ━━”く考えて行動する

様にな悠里分かったか?」




「はい。」


悠里と桜佑は顔を見合わせ

ぐータッチをした。


「まあまあホホホ」

お祖母様は嬉しそうに笑っていた。

どうやらお祖母様は悠里を気にいった

らしい。



「じゃあ早速ですが、用も済んだの

で悠里をマンションまで連れて

いきます。」


桜佑は悠里の手を取ると、二人の

部屋を後にした。


「2人ともお互いを気にいった

みたいですね。」


「ふむー_ー!!どうかのう。」

加納一大は、何やら引っかかる物

を感じていた、会社を経営してきた

長年の勘というのだろうか?。


「まあ、上手く行かないなら

それもヨシだ‼」


一大は何とも言えない顔をしていたが

「ご縁ですもの

回りがなんと言っても仕方

ありませんでしょう。ホホホ」


雪乃はノンビリした性格だ

雪乃が笑うと

そうかもしれないと頷く一大だった。



悠里が桜祐につれられて

車庫まで行くと


「じゃあ、俺デートだから

行くわ、時間ねーし、(笑)」

桜祐は無表情でサクサクと車に乗り

エンジンをかけた。



「えっ、え━━━━え‼

真逆のほったらかし?

場所分かんないんやけど‼」

しかもリュック重いんデスケド‼


「ああ、コレ、マンションの🔑」

ちゃり━━んと投げられた鍵は

悠里の足元に落ちた。


「大丈夫、家の者に遅らせるから

じゃあ━━━━なぁ‼

バイバ━イ」


無常にも桜佑はブブブ、ブ━━━ン

と国産の高級車をひと吹かしした後

ニヤニヤしながら


「俺を、あてにするなよー

━━━アハハハ」

そう言い残し車事

無常にも去っていった。


ずっと見た事の無かった許婚相手

どんな人だろうと勝手に想像してきた。

今我慢すれば彼がきっと救い出して

くれる。


私の王子様


そう信じてきた。

優しくて、包容力があって悠里を

甘やかしてくれるステキな王子様。

きっと大丈夫‼

それを支えに生きて来た。



ガビ━━━━━━ン

「私の王子様が、

こんなクソ馬鹿野郎だったなんて

最低、最悪‼」



悠里は想像の中から現実の厳しさに

引き戻されたショックから

抜け出せ無い。

それに、朝から桜祐に会えると

嬉しくて興奮して何も食べて

いなかった。


きっと桜祐さんはお昼ご飯

奮発して、美味しい物食べさせて

くれる。


憧れのファミレスで‼

そう、楽しみで仕方なかった。

そんな夢も木端微塵‼



「お腹空いたよ~⤵w」

お昼にまだなのに飯抜きかよ~



トボトボと門に向かって歩く

右左を見ても何処で車を降りたのか

分からない。



きっと智和はこうなるかもと

知りながら悠里を歩かせたの

だろう。

帰り道が分から無いように‼

帰って来たら困るって、思ったに

違いない。


本物の毒親だ‼

父親も

「何か聞かれても、はいとしか

答えては駄目だ、お前を育てたのは

私達なのだからな!

恩返しはしてくれよ、お前は

拾い子なんだからな!」



そう曾祖父の、加納のお爺様は

貴族の血の入った娘を嫁に欲しい

と言っていたんだ、じゃあ私は違う

私にはそんな貴族の血など入って

いない。


三上とは血縁関係は無いのだし


じゃあ詐欺に値しないか?

私のしてる事は詐欺‼



このまま、桜佑には関わらず

無事3年間を越したら、全くの

他人だったらよくない?。



彼との縁談は破談

こんな仕打ちも当たり前かもしれない

だって私は嘘つきなのだから。



「君が悠里?」

ふと耳に聞こえ振り向いた。

背が高くビジネスカットの凛々しい

目付きの男性が声をかけてきた。



「はい・・?」

振り返る悠里をみつめるのは

桜祐によく似た男性。


「送るよ祐から頼まれて

来たんだ、門の近くでウロウロして

そうだから帰るついでに送ってやれってね。」


「はあ~あの野郎

人任せか💢


ありがとうございます。

場所分からないし、アイツあんなん

だし・・どうしょうと思っていました。」

突然現れた彼には感謝だ。



「全くだ‼

桜祐はこんな時も自由奔放か‼

許嫁を残して、デートあ‼あ、

違う、ちが・・・」


彼はバツが悪そうに言い訳を考えるが

何も浮かばない様子桜佑の許婚に

彼女がいるとバラしてバッが悪い。


「知ってます。

本人から聞きました。」


悠里はアッケラカーンと答える

「桜佑から聞いたの?」

彼はビックリ!!


「はい。」


「君は何も思わないの?

・・・その、ヤキモチとか⤴」


「いえ、まだ2時間しか

合ってませんし、印象も最悪な

バカヤローの

クソチャラ男ですし・・・」


ポカーン・・・

それを聞いた桜哉は

ブヒャヒアヒャヒャヒゴッ!!!ゴ

ホッ!ゴホッオエェェェー!!!

ꉂꉂあははは突然の大笑い


悠里は๑°⌓°๑唖然

そう言えば桜佑も同じ笑いを

していたな。


プイツ

悠里はドカドカと門に向かって歩き

出した。


アハハヾノ〃アハハヾノ〃


は?なんちゅう笑い方

ハハハ?乾いた笑いを悠里も見せる。

やっとられん、悠里は無視して

スタスタスタスタ

彼を振り切り歩き出す。



「おい、おい、

待て待て、」

振り向き座間にキッと睨ん

だ悠里に彼はビビってしまった。


「ゴメン、ゴメンな‼

つい・・・


桜佑みたいな跡継ぎ滅多に

いないぞ‼

金持ちでイケメンで信頼もある。


他の女の子に取られるって

心配しないの?」



「しないです。プイツ

他の人に信頼あってもワタシの

信頼度ゼロですから‼」



「へえ~


面白いな!

車そこだからイコ」


桜哉は悠里の手を引いて歩きだした。

悠里はコイツらこう言うのが

好きなんか?


そこには桜佑の車にも劣らない

ペッカペカの高級車が止まっていた。


行く場所さえ知らない悠里は

彼に従うしか無かった。

スーツとドアが開き黒いスーツの

彼が乗ってと言う。


子供の悠里には分からないが良い

香水の香りがフッと香ってくる。


「うわぁー」

くう━━━んくんと匂いを嗅ぐ。


「いい匂━━━━━━い。」


彼は名刺を悠里に渡した。

「加納香料株式会社?」


「香水屋さん?」


「聞いたことない?

結構有名なんだけど・・・!」


「すみません、香水とは無縁な

家庭環境で育ったので・・

えっと加納って桜哉つて?」


「気付いた?

俺は桜佑の二つ上の従兄弟だよ。」


「あ‼ 似てる‼」


「え?あんまり言われた事

無いけどな‼」


「性格、笑い方ソックリ

あのげゲラゲラ、さっき桜佑にも

笑われたし、貴方にも‼ムカック💢」


「ああ、ああゴメン。

今日は桜佑の婚約者が来るって

聞いてたから君に会いにきたんだよ。」



「はぁ」


「そしたらサ ・・・・・ウフフ」

桜哉(おうや)は、イミフな笑いを

浮かべた。


「そしたら?ムカ」

悠里はキツい目で見るキッ

「いや、あんまり可愛らしかった

から・・・サ」


「桜佑の好みじゃないって

思ったんですよね。

ガキだって?」


「ん、うん。

ガキって、言い方はちょっとナ」



信号が赤に変わり一旦停車

ふと悠里に近づいたと思ったら

桜哉は悠里の三つ編みをといた。

ふんわりとしたロングヘア━は

ゆるゆるとしたカールをなびかせた。

悠里は可愛らしいお人形さんのように

見えた。


「悠里、可愛らしいな‼

俺は好みかもしれないぞ‼

俺にしない?」


「ロリコンですか?バッサリ」


「思ったままを言ったんだよ。」


悠里はそれどころじゃなく、お腹が

空いていた。

ポケットには千円

「桜哉さん、スーパーありますか?」


「ん?何買うの?

コンビニじゃだめ?」


「はい。スーパーは見切り品が

置いてある店があるんです。」


「えっ( ☉_☉) パチクリ。見切り品?」

「はい、千円しか無くて‼

朝から何も食べてなくて、」

見切り品を買うなんて初めて聞いた桜哉

はビックリ‼️


「そっか‼

じゃあカフェでも寄る?」


カフェ?悠里は顔が青ざめた

カフェなら千円を越してしまう。

ポケットには千円とゴミクズしか

入っていない。


「め、滅相も無い‼

えと、やっぱりマンションへ

お願いします。」


「え、僕は良いよ!

今日は休みだし」


「いえ、いえ、ほ、本当に

いいですから・・・すみません

ご親切に言って下さったのに」


「そう?」

桜哉はまたハンドルを切った。


それから信号を三つ過ぎると風景が

徐々に変わっていった。

人も多くなるし車も増えた、オシャレ

な店も沢山あり高々としたビル

も連なってきた。



「悠里、もう直ぐ着くよ

鍵は持ってる?」


「はい。

ありがとうございます。」


道沿いに車を停止する。

「このマンションの5階だけど

大丈夫?加納ってあるから

それ目印にしてね。」


「あ、あ、はい。」


「桜哉はそう言うと、じゃ、

困った事があったら名刺の

裏の電話番号に連絡して」




「じゃ一つお願いがあります。

お爺様に電話してもらえます・・か?」


「爺さんに?」



「私、携帯持ってなくて

言い忘れたことがあります。」



「ああ、いいよ。」


しばらくお爺様と話していた桜哉は

悠里に携帯を渡した。


「先程は失礼致しました。

悠里です。」


爺様は急に不機嫌になり

「なんでお前が桜哉といるのだ

お前は桜祐の、許婚だろうが💥💢」


「はい、桜祐さんは御用で

居なくなられ親切に桜哉さんが

マンション迄送ってくださったの、

です。」

爺さんの説教は長々と続き


「貸して‼」

桜哉は見兼ねて説教する爺さんに

説明してくれた。


そして悠里は光熱費は自分達で支払

う事と、家賃は悠里が学校を卒業

して返す事を約束した。



「まあ、桜祐も働いているし

桜祐も稼ぎは可也あるからな

良し‼

そう言う事ならそうしよう。」ブチ



じい様はそう言うと電話を切った。

悠里もホッとしていた。

三上の、血を引いていないと知れたら

詐欺に当たる、それを知っていながら

援助を受けるのは詐欺に自分も

加担する事になる。



「なんか事情でもある?

爺さんは金持ちなんだから

甘えれば良いのに。」



「あの~あの私と桜祐の、

マンションって、お家賃いくらです?」


「は?知らないの?

あれは爺さんのマンションの中

でも安い物件だから2、30万

だったかなあ!」



ウップ




そう言うと桜哉は笑いながら

帰って行った。


それはオレンジ色の四角い建物で

街中と言うのにちゃんと駐車場が

付いていて綺麗な建物だった。


悠里は階段を上がる。

エレベーターもあるけど使ったら

怒られると思い込んでいる。

今の今までが、

「あんたは、歩いて登りな‼」

歩き始めた頃からそう言われてきた

お陰様で健康に育ったので

それはそれで意味があったのかも

しれない。


「五階だ」

部屋の番号を見ながら歩く。

セキュリティもそんな無く入れた。

テキトーに綺麗で

テキトーに便利で

テキトーな許嫁を住まわせるには

テキトーな場所と思ったんだろう。


加納・・・加納・・・加納

「あ‼あったココだ‼」

部屋を開けると、ガラ━━━━━ン

何にもない部屋は日差しを

浴びてフローリングがオレンジ色に

光っていた。


水道も電気も通っていて、エアコン

もついていた。

でも使えば光熱費がかかる。


ハァ…どうしょう。

月30万も払えない!


悠里は住む事を辞める事にした。

桜佑に相談することを決めた。

頼らないつもりが頼らざる

負えない悔しさが悠里の頬を

濡らす。




それに、悠里には悩みがあった。

三月10日にある新入生説明会

説明会はどうでもいい。

教材の販売、制服の寸法、ジャージ

の販売、カバン靴下

それは全て加納家から出るはずだった

しかし悠里は加納家おすすめの

花嫁修業で有名な名門、白百合学園を蹴って進学校の

難藤高校に通う事にした。


援助は受けられない。

💡•̀ω•́そうだ‼⚡ピコーン

桜祐に借りよう・・・か?



いやいや(。´•ㅅ•。)ショボン

アイツ私を何とも思って無いし・・・



『困った事があったら

電話して』

桜哉の声がリフレイン。

名刺を見ながらバタンボテンバタン

ゴロゴロしながら考える、



「お金貸してください。

30万‼」

言えない無理無理無理

どうしよう(´◔‸◔`)💦お金が無い‼



そうだ💡お祖母様‼

駄目だジジイが、ひつついてる。

どうしょう。


悠里は桜哉に、困ったら

電話してと言われても

携帯を持っていない。

そんな高級品、持てる訳が無い‼

だって拾い子に金かけたくない

そう言われた。


拾って貰わない方が良かった、

たとえ野垂れ死にしたとしても

お金の、心配は無かったに違いない。



1人で生きなきゃ何としても

死ぬのはヤッパリ怖い


ピカピカの、フローリングの、上で

悠里はペタンと座り込みこれからの

事を模索する。


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