作家の、作家による、作家のための究極二次創作

小説とは、いわば人の想像が生み出した産物だ。
物語の中で何が起きても、何が書かれても、何を伝えようとも。それは自由であり、個性であり、ましてや縛りなどない。
そして――無限にひしめく文字という名の大海で、この作品は帆を揚げた。

その船に乗り込んだのは、荒波に揉まれて懸命に生きてきた作者たち。
自らが愛でる作品を従え、作者《いいだたろう氏》が操舵する船《僕はまだ「小説」を書いたことがない。》に乗り込み、出航したのだ。

目的地は不明。だが不安などない。
ここには仲間がいる。
同じ志を持ち、時には好敵手として、彼らは果てなき航路を進んでいく。


……と、この作品を私なりに拡大解釈してみましたが、こんなかっこつけた事をつらつらと並べるよりも、もっと簡潔に言った方がこの作品の魅力が伝わるでしょう。

登場人物は主に実在する作家自身。自らの作品に登場するキャラクターの能力を駆使し、エディターと呼ばれる敵勢力との争いを繰り広げる……というものだ。
現代ファンタジーとSFの世界感を融合したような作風。「僕」の一人称視点で描かれる多彩な作家の方々とのやり取りは、まるで本当にそこに作家本人がいるかのような臨場感をも感じさせる。

特筆すべきは、作家が使う能力の作り込みだ。
敵対するエディターに合わせて、ぶつける作家を交代させたり、はたまた能力を組み合わせて共闘したり……と、まさに夢の共演である。
個性豊かな作家たちの掛け合いは、まるでアベンジャーズを彷彿とさせると言っても過言ではないかもしれない。

しかし、それだけの登場人物が出てくるとなると、物語を読む上で状況の理解が困難な場面が出てくると思いがちだが、この作品については心配いらない。
きっちりと場面や見せ場を凝縮し、セパレートされている為、読者目線から見ても存分に楽しめる事だろう。


長くなったが、最後に一言。
かくいう私も、ちゃっかり出演してます。

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