米国人の彼と、英国にルーツを持つ彼女の関係は、最近うまくいっていない。破綻は「アップルパイの味」という些細だが深刻な文化的対立をバネに生じるが……?
マドレーヌを食べて遠い過去の記憶を思い出すという有名な作品がありますが、ラズベリーを見つめて現在に立ちこめた靄を晴らすというのは……、酸味のきいたお洒落なアップルパイを食べたときのような満足感があります。ラズベリーの花言葉を胸に刻んで、他者の文化を受け入れること。家族におけるコミュニケーションについて深く考えさせられる短編です。米国風アップルパイ並に甘く、英国風アップルパイ並に小気味よいですよ!
オーケー、今日はご機嫌なアップルパイストーリーを紹介するぜ!サクサクと読めるが、ポロポロと崩れるパイ生地がちょっと切なさを演出し、中身はとろりと甘いってやつさ。
アメリカ的な日常風景から物語ははじまる。
アメリカ人の夫、イギリス人の妻。
ステレオタイプなイメージが当てはまるように、これ以上ないぐらいビルはアメリカ人だし、ソフィアは絵に描いたようなイギリス人だ。
同じ国に暮らしていても、地方ごとに独特の文化や常識があって「うちではずっとこうしてた!」が原因でケンカになる事も日常茶飯事なのに、それが国レベルの文化の違いとなると、まあお察しだな。
夫婦の日常を壊してしまったのは、文化の違い。食文化の違い。トリガーを引いたのは、この日ソフィアが出した「〇〇〇入り」のアップルパイである……。
「〇〇〇だと!?」「アップルパイにはアイスだろう」「カスタードはどうしたぁ!」なんて反応をしちまったかい? お前は第二のビルになる素養がある、考えを改めろ。今すぐに、だ。
規模は違えどよくある話で、今日は君達が「とある夫婦」の立場になるかもしれない。まだ恋人同士の関係であってもね。そんな時この物語が示唆する教訓を知っていれば、解決の糸口になるはずさ。
ぜひ読んで、アップルパイに込められた愛の姿を堪能して欲しい。