第2話TSしてました

それから数分すると、勝手に家の扉が開いた。

入ってきたのは管理人さんである百々ももさん。

そして俺を見るなり、


「そ、そんな…!?まさか、紅桜あお君が誘拐をしていたなんて!?」


と、姉と同じのような態度。


「は?誰が誘拐だって?俺はそんなことしてない!?」


と言うも、


「さっきからこんなんで。」

「可哀そうに…。」


二人して落ち込む。

俺が何をしたっていうんだ。

ただ体調が悪くて寝ていただけなのに。


氷柱ひち姉に、百々姉!」

「「えっ!?」」


俺の声を聞くなり二人は顔を見合わせる。

そして、氷柱姉から喋った。


「その呼び方、紅桜…なの?」

「逆に誰だっていうんだよ?てかここ、俺が住んでるとこだろ?」

「あばばば……?!?!」


そう言って、百々姉は白目を剥いて倒れてしまった。


「百々姉、大丈夫!?」

「え、あ、百々、百々!?」


なぜそこまで驚くのかわからない。

一体何がどうなってるのやら。

百々姉は驚きのあまり倒れてしまっている。


「あ、紅桜!私は百々を運んでいくから、絶対ここから動いちゃいけないわよ?戻ってくるまで、絶対待ってなさいよ!?」


何故か、厳重に注意された。

そのまま、俺は一人取り残されてしまった。

それから少しして、


「と、トイレぐらい、いいよね?」


動くなと言われて、どこまでの範囲で動くなと言われているのかわからず、少し我慢していた。

が、それも限界を迎えていた。

俺は、布団から出てトイレへ。

そんな中少し違和感があった。

なんだか今日は変だ。


「いつもより視点が低い気がする。」


病気でここまでなると、俺はかなりひどい病気にかかっているのではと思ってしまった。

トイレにつき、履いていたズボンをずらす。

そういえば、今まで普通だって服やズボンが少し大きく感じる。

屈んでも足元が少し見づらいし。

これも病気のせいなのかと思うと、本当に病院に行った方がいいのではと思ってきた。

脱ぎ終わると、トイレの前に立ち、いつものように構えるのだが、


「あれ?おかしいな?」


あの感覚がない。

男にだけついているはずのアレの存在を感じない。

俺は恐る恐る下を向き、


「ふぇ?え、えぇぇーー!?!?!?」


びっくりした。

というかそれどころじゃない。

あれが亡くなっている!?

あるはずのそれは亡くなってしまっていた。

そしてさらに、俺は不運見舞われた。


「も、もう無理ー!」


出かけていたものを止めていたけれど、そう長くは持たなかった。

足元に水溜りができてしまった。


「あ、あ、………うっ‥‥うっ‥…ぐすっ…」


そして俺は、その場に立ち尽くしたまま泣いてしまった。




――――――――――――――――――――――

―――――――――――

―――――

――



「もう泣かない、泣かない。」

「……。」


俺は死にたくなっていた。

お漏らしをしてわんわん泣いている所を姉に目撃され、その後処理をしてもらって最後には慰められていた。

こんなの、恥ずかしすぎて生きていけない。


「それにしても、体は全くの別人なのに、中身は紅桜なのよね。こういう時どうすればいいのかしら?」


そう言って悩み始めた。

当然俺も。

トイレを出てから鏡を使って全身を見てみると、完璧な女になっていたからだ。

いつもより視点が低かったのも、姉に抱きつかれた時、大きく感じたのも、全て幼女の姿に変わっていたからだった。


「やっぱりこれは、TS病よね?近くの病院で診査してもらう必要があるのよね?」


TS病。

それは3年前から発生した病気。


いつのまにか体の性別が変わってしまっていたというもの。

何故そんな事が起きるのかは不明らしいが、その病気はとある名のない彗星が降った日から発生したらしい。


それにより、その彗星はTS彗星と呼ばれるようになったとか。

この病気は、そのTS彗星を見た人に起こりやすく、俺もその彗星を目にしていたからなのかもしれない。

そして、この病気は一生治らないと言われている。


「今から出かけるから、着替えてちょうだい。」


とは言われたものの、俺に合う服がない。

背は10センチ以上縮んでしまい、見た目年齢は12〜14ぐらい。

下手すればもっと下だ。


「どれもぶかぶかなんだけど。」

「上はぶかぶかでも大丈夫でしょ。下は、半ズボンを履きなさい。」


俺は姉に従い、そこらにあった服を着る。

いつも着ているはずの服はとても違和感があった。




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「確かにこれは、TS病ですね。しかも、アルファ型ですね。」


俺が病院に行って診察を受けた結果、TS病という結果だった。

診察に関しては、採血と軽い質問(精神異常であるかどうかの)だけだった。

最近の技術では採血すれば、その人遺伝子を解明し、本人であるかどうかまでわかるらしい。


そしてアルファ型と言われていたが、このTS病にはアルファ型とベータ型の2種類ある。

これは、全く別人のようにTSするアルファ型と遺伝子に沿ってTSするベータ型の2種類ある。

俺の場合、自分で言うのはなんだが、超絶美少女になっていた。

しかも、外国人またはハーフのような容姿。

姉とは全然似ていない。

あと、胸の大きさはCぐらい。

姉には負けてはいるが成長の可能性ありだ。


「この見た目じゃ、誘拐してきたと言われても納得できるな。」

「そうでしょ?」


俺の姿をもう一度見直す。

流石にロリコンでは無いので、ストライクゾーンでは無いが……全然ありの容姿だった。

検査結果が出てから、今後についての相談をされた。


「それにしても運がいいですね。」


まず一声がそれだった。

確かに運がいいと思う。


なんでかって?


それはもちろん、このTS病が発生し始めてから、つい最近まで法律の改正がなかったからだ。

法律を変えるにも、ちゃんとした政策を考えなければならない。


TS病を装って悪用されてはいけないし、かと言って不十分な案を提示しては、病気にかかってしまった人から文句が出るに決まっている。


その結果、ちゃんとした対策がこの前発表されたのだ。

内容はうろ覚えだが、生活面においての資金援助や戸籍変更の手続き。

さらには、性別が変わったことによる知識的な問題を解消するために、ある程度のお勉強と持ち帰って自分で勉強する用の資料を渡された。


まあ、みんなわかってると思うけど、保健の知識を蓄えるための勉強なので普通につらい。

今まで知らなくて良かったことを知るようにならないといけないなんて。


「辛からったー。」


アパートに帰るとついつい言葉が出てしまった。


「でも、これから市役所に行かないといけないんだからもう少し頑張って。」

「そんなー。」

「頑張ったら、良い事してあげるから。」


どうせ期待しても良い事はないので無駄ではあるが、自分のことなので頑張ることにした。

市役所では、両親がいなくても身内の人と一緒であれば大丈夫らしく、サクッと済んだ。

文字通り、少し頑張っただけで済んだのだ。

帰った頃には、夕方になっていて、お昼ご飯をせっかく作ってもらったのに、食べることはなかった。

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