第9話仲良くなるにはクレープ必須?
2人から逸れないようについていくと、少しだけ並んでいるキッチンカーのスペースに出てきた。
看板を見る限りクレープとドリンクを売っているみたい。
「すごく人気ですね。」
「ここのクレープはとても美味しいんだよ。」
「美味しい、です。」
若葉先輩だけじゃなくて黒咲さんも目を輝かしている。
あまり顔に出ないから、相当なんだと思う。
どんどん人が増えていくので急いで列に並ぶ。
順番が来るまで時間がかかりそうだったから、おすすめのクレープを何個か教えてもらった。
一般枠は、バナナチョコ、苺アイス、キャラメルフレーク。
特別枠は、コーンワサビ、抹茶キムチ、シナモン納豆。
特別枠は聞いた時はどうしておすすめなの?罰ゲームで?
と思ったけど、意外にも美味しいらしい(2人調べ。皆さんがどうかは分からない。)。
その中で驚いたんだけど、黒咲さんはシナモン納豆が大好きらしい。
こういうのはどちらかと言うと若葉先輩が好きそうだったのでびっくり。
「今日はぁ、新しい子を連れてきてくれたのぉ~。嬉しいわぁ~。」
声をかけてくれたのは体格がガッチガチでとても大きい男性。
でも、喋り方はそっち側の人だった。
「そうなんですよ、お姉さん。彼女は苺アイスで、私たちはいつもので。」
「分かったわぁ~。お師匠様ぁ~、苺アイス、シナモン納豆、抹茶マシマシキムチ一つずつでぇ~す。」
いつもので分かると言う事は、やっぱり何度か来てるみたい。
にしても、最後のはきっと若葉先輩だと思う。
やっぱり、期待は裏切らないね!
「今日は、お姉さんが作らないんですね?お師匠様(?)が作ってるんですか?」
「そうなのよ。今日は特別に来てくださったのよぉ~!現役で頑張ってるすごい人だから、今日来た人はついてるわよぉ~!」
俺たちは運が良かったらしい。
普段がどんな物なのか分からないけど、そのお師匠さんが作ってくれた物は初心者が見ても分かるぐらい高値がつくような物だった。
「ありがとうございます。」
「どういたしましてぇ~!」
クレープを受け取ると、空いていたベンチに移動した。
黒咲さんは移動する前からかぶりついてとても幸せそう。
別人のような顔になっているから、本当にこのクレープが好きなんだね。
「紅桜ちゃん食べないの?」
「黒咲さんが美味しそうに食べるので見入ってました。」
「だよね。最初に美和ちゃんと来た時は私もビックリしたよ。やっと心を開いてくれたのかなって思ったら、クレープちゃんにだったんだよね。ほよよ。」
「あはは、、、。」
なんとも悲しい話だ。
でも、そこから今の関係になったのはすごいと思う。
黒咲さんは全て食べ終えても、まだ目を輝かせていた。
感情に浸っていると言うのもあるけど、俺と若葉先輩のを見て食べたいと思ってる感じ。
「えーっと、食べかけでいいならあげるよ?」
「え、あ、え、と、…」
いきなり声をかけてしまったので、黒咲さんがどう返していいか分からなくなっていた。
「美和ちゃん、まだ食べたいの?」
若葉先輩に聞かれるとコクコクと首を振る。
「紅桜ちゃんが、食べかけでもいいならって言ってるけど、どうする?」
少し困っていた。
俺に気を遣わしてしまったからなのか、それとも男の食べかけだからか。
後者なら確実に俺が死にたくなるけど。
「紅桜ちゃんはそれでいいの?」
「食べかけが気にならないなら、いいですよ。私は気にしないので。」
「だそうだよ?美和ちゃんどうする?」
それから少しだけ悩むような仕草をして、口を大きく開けた。
これはつまり、食べさせればいいんだよね?
そう言う意味だよね?
勘違いだったら困るけど、恐る恐るクレープを近づけた。
それがじれったかったのか、勢いよくクレープにかぶりついた。
「豪快だね。」
「(ふんふん)」
美味しそうに食べる物だからまた見入ってしまった。
女の子ってこんな顔もするんだ。
氷柱姉はこんな顔した事なかったな。
「美和ちゃん、私のも食べる?」
美和ちゃんは首を横に振った。
俺の方に向き直り、また口を大きく開けた。
もう一口くれと言う事なのかな?
もう一度クレープを口に近づけるとかぶりついてきた。
こうやっ見ると小動物みたいで可愛かった。
自分より大きい小動物ってなんなんだろう?って自分の中で思ってしまったけど。
「美和ちゃんを紅桜ちゃんに取られたー!?そんなー!?」
「取ったって事は――」
おかしな言いがかりをつけられて少し焦る。
そんなつもりとか全然ないからどうすればいいのか。
「先輩、ありがとう、ございます。」
「気にしなくていいよ。」
「先輩の事、誤解、してました。」
誤解?
何のことだろう?
何か誤解されるようなことでもあったのかな?
「校門で喧嘩してた、ので、怖い人かと、思ってました。」
「紅桜ちゃんって、喧嘩とかするんだね?」
「誤解です誤解!?」
休み明け最初の登校のところを見られていたと言うわけか。
どちらかと言うと呼び止められていたので俺は被害者に当たるんだけど。
「見た目は小学生だもんね。」
「登校したら変な目で見られて大変ですよ。」
これからは少しずつ周りが慣れてくれると思う。
後少しの辛抱だから頑張りたい。
「先輩、これから、仲良くして、くれますか?」
「うん!」
嬉しさのあまり少し前のめりになりながら頷いてしまったので黒咲さんがちょっと引いてしまった。
これは完全にやらかしている。
でも、昨日はあんなだったのに1日でここまで進展したと思うととても嬉しい。
女の子と仲良くなるにはクレープが必須なのかな?
「美和ちゃんが、紅桜ちゃんと仲良しさんになって嬉しいよ。でも、私の時は仲良くなるのに時間がかかったから複雑!」
「若葉先輩は、距離が近いから。」
私も分かるよ。
マイペースだから、初めは辛いよね。
ぐいぐい来る感じが怖かったりするんだよね。
「悔しい!こうなったら、もっと仲良くなってやる!えいっ!!」
若葉先輩が勢いよく黒咲さんに抱きついた。
若葉先輩はとても嬉しそうだけど、黒崎さんはちょっと苦しそうかな?
本気で嫌がっているわけではないみたいだからこのままにしておいても大丈夫だよね?
その後もうりうりと顔をさすりつけていると、我慢の限界が来たのか俺を盾にするように逃げてきた。
その姿に若葉先輩はショックのあまり砂となっていた。
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