第10話服を買ってもらいました!
「やり過ぎは良くないですよ?」
「反省してます。」
若葉先輩は反省の意を込めてなのかベンチの上で正座。
俺が軽く注意してるけど、はたからは説教してるみたいに見えてそう。
「黒崎さん、もう大丈夫だからね。」
「(ふんふん)」
言葉は発しないけど、頭を縦に振ってくれてるから分かったみたい。
それにしても、こんなにくっついても嫌がらないのは仲良くなれた証拠でもあるから嬉しい。
「うう~。私にも紅桜ちゃんみたいに擦り寄って欲しいよ~。」
「若葉先輩は、もう少し、待ってくだ、さい。」
「そんな~!」
きっぱり断られた若葉先輩は落ち込みまくっていたが、移動するとケロッと元通りに。
さっきまでのが茶番のような手のひら帰りで――茶番だっか。直ぐに元気いっぱいになった。
ショッピングモールを歩き次に向かったのは服屋さん。
若葉先輩がどうしても行きたいと強く主張してきた。
そんなに強く言わなくてもこっちは全然気にしないのにと思っていたけど、後から直ぐに帰りたくなってしまった。
「紅桜ちゃん、次はこっちを着てみて!!」
「先輩は、こっちの方が!!」
先輩が着る服を買うために寄ったのかと思っていたけどそうじゃなかった。
試着室に入れられると、若葉先輩に着ているものを剥ぎ取られてしまった。
後は外から渡される服を着るだけ。
若葉先輩が服を買いたいんじゃなくて、俺に着せたくて来たみたいだった。
本来なら、女装…今は普通に試着でいいのかな?
まあ、出来るし、可愛くなれるから嬉しいけど、若葉先輩と黒崎さんにみられるのが恥ずかしい。
しかも、ちゃっかり黒崎さんも服を選んで持って来てるところがなんとも。
それに、持ってくる服は露出度高めで、はては面積が小さい水着まで。
こればっかりは恥ずかしさのあまり死にそうなのでNG。
「もう許してください!」
一声あげると服は運ばれてこなくなった。
けど、制服は返してもらえず、2人が勝手に選んだ服(お金は若葉先輩が自分から払ったよ!)を着ることに。
「恥ずかしい。」
2人は制服なのに俺だけ私服だからよく目立つ。
歩いていたらたまに視線が来るから困ってしまう。
その後もお店を転々としていたら空が夕焼け色に。
そろそろ帰らないと親に迷惑をかけてしまうとの事で帰ることになった。
久々のお出かけで嬉しくなったのか、帰り際は少し寂しさがあった。
「ただいま。」
「おかえり。…あら、可愛らしい服を着てるわね?どうしたの?」
「特別クラスの先輩が今日買ってくれたんだ。」
「良かったわね。それとどこか嬉しそうね。すごく楽しかったのね。」
「うん!新しく仲良くなった子もいて楽しかったよ!」
今日あったことを簡単に説明した。
話している間はその時の気持ちが溢れて来て話すだけで笑顔になれた。
「良かったわね。今日は赤飯がいいかしら?」
「そこまでじゃないよ。」
今後嬉しいことがあるたび赤飯になりそうだ。
氷柱姉も嬉しそうに聞いてくれて、話すのがとても楽しい。
思う存分話すと思っていたよりも時間が経っていた。
氷柱姉と一緒に夜ご飯の準備。
手伝う事は食器を運ぶ以外は無理だけど。
料理の腕は氷柱姉と比べられないほどだけど、料理はできる方ではある。
このままだと料理は氷柱姉に任せっきりになってしまうから、少しは勉強しないといけない。
今後の課題だね。
2人でご飯を済ませんと次はお風呂。
今日も俺から入らしてもらう。
「紅桜、学校に着て行った服はどこにやったの?」
「カバンの中に入れてるはずだけど。」
脱ぐ前だったので、脱衣所から戻った。
でも、カバンの中には服はなかった。
「……そう言えば、制服を預けた後返してもらった覚えがない…。」
「連絡はできるの?」
実は今日の内に2人とは連絡先を交換したんだ!!
だから、連絡はできるんだけど、自分から誰かに連絡することってそうそうないから緊張するよ!!
女子相手にはもってのほかだから、手に持っているスマホが少し揺れてる。
スマホを落とさないように両手で握りしめ、登録された電話番号をクリック。
ビクビクしながら耳に当てるとコール音が続き、それが終わると若葉先輩の声が聞こえて来た。
『紅桜ちゃん、どうしたの?もしかして、連絡先を交換したから早速電話をしたくなったとか?』
「あ、え、えと、――」
緊張のあまり喋ろうとしても声が出ない。
戸惑っているのを感じ取ったのか若葉先輩は我慢をするように笑っている。
『落ち着いて。まずは深呼吸だよ。』
若葉先輩に言われるがままに深呼吸を繰り返すと、だんだんと手の震えまで落ち着いて来た。
『落ち着いた?』
「は、はい!落ち着きました。」
『なら良かった。それで、どうして私に電話して来たのかな?何かあったの?』
「実は、制服がなくって、もしかしたら服を買った時に若葉先輩に預けたままにしてしまってるかもって思ったんです。」
『持ってるよ。』
「そ、そうですか!」
お店側に置き忘れてるとかじゃなくて良かったー!
お手数をかけるけど明日若葉先輩に学校で渡してもらおう。
『ごめんね。汚しちゃって、綺麗にしてるから明日は無理なの。明後日には返すから!』
「分かりました。」
汚さないようにカバンから出してたら、コップを倒してしまって飲み物がかかってしまったらしい。
若葉先輩らしい事だから容易に思い浮かべられる。
わざわざ洗わなくても、ちょっと汚れたぐらいなら気にしないからそのまま返してもらっても良かったけど、ここはご好意に甘えておこう。
「どうだったの?」
「やっぱり先輩が持ってたらしい。洗濯もして明後日渡すって。」
氷柱姉に伝えると俺を凝視していた。
気にしすぎかもと思ったけど、どう見ても勘違いではない。
「どうしたの?」
「紅桜って、露出癖があったりはしないわよね?」
な、何言ってるの!?
そんな性癖持ち合わせてないよ!?
「だって、あなたが隠してるのは下だけで上は隠してないじゃない。」
「え…わわわ。」
バスタオルで隠せばいいって考えてたけど、いつものようにしてたら下半身だけだった!?
男の体だったら上半身は隠さなくてもいいけど、こっちの体は隠す必要があるんだった!?
「私はすでに見終わってるからいいけど、他の人がいる前ではやめておきなさいよ?流石に引かれるわよ?」
「こ、これは、いつもの勢いだっただけだもん!!」
これからは注意していかないと、外で他の事でも恥ずかしい思いをするかもしれない。
日頃の行動を細かく確認して、せめて特別クラスの3人の前では恥ずかしい思いをしないようにしないと。
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