第11話お手伝いとチンピラ
後日、先輩から手渡しで制服を返してもらいました。
飲み物をこぼしたと言っていたけど、汚れは全然なくてちょっとびっくりしました。
黒咲さんとは距離がなくなり、若葉先輩以上に仲良くしてもらってます。
話す事がなくても近づいて来て、そばにいることも多くなって若葉先輩に嫉妬されてます。
ただ、良い事ばかりではなく、未だに満さんは学校に来る事はなくて心配です。
自分のせいで来なくなってしまった事に心が痛いです。
「今日も一緒に帰ろ〜。」
「ごめんなさい。今日は待ち合わせをしている人がいるので。」
「もしかして、恋人!?え、紅桜ちゃん、恋人いるの!?……あれ?でも、彼女と彼氏どっちだろ?」
「どっちでもないですよ!?恋人なんていませんよ!?」
今日はおじさん(百々姉のお父さん)の頼みで行かないといけないところがあります。
決して恋人がいて、その人と会ったりしないよ!?
それに氷柱姉や百々姉、おじさんのような理解してくれる人なんて滅多にいないから恋人がいたなんて事一度もない。
「パパ活…でもないんだよね?」
「姉の友達の親とパパ活何てできるわけないじゃないですか!?」
「だよねだよね。」
二回も疑われて三回目は嫌だよ。
「それならしょうがない。今日は2人だけで帰るよ。」
「(しぼ~ん)」
2人とも残念そうだった。
特に黒埼さんは明らかに残念そうな効果音が聞こえて来た。
でも、おじさんの頼みだから、2人には悪いけどこっちを優先させたい。
「じゃあね〜。明日は全校集会があるからグランドでまた会おうね!」
「ばい、ばい。」
「また明日!」
学校を出ると商店街の方に向かった。
おじさんとは商店街の入り口の方で落ち合うよう昨日言われた。
「おじさ〜ん!」
おじさんが先にいたので手を振ってらこっちに気づいてくれた。
「すまんね。百々が忙しくて来れない代わりに紅桜君に家の買い出しを手伝ったもらう事になって。」
「おじさんの頼みだから気にしないよ。」
おじさんと回ったのはお肉屋さんに八百屋さん。
この時間だとちょっぴりお安くしてくれたり、知り合いという事で多めにくれたりとサービスしてくれる。
「可愛いお嬢ちゃんだね。あんた、いつからこんな可愛い子を連れて歩くようになったんだい。」
「ここ最近だよ。家の娘の知り合いの子で、今は家で預かってんだよ。」
TS病にかかって女の子になりましたとは言えないので、おじさんの所でお世話になっている子にしてもらってる。
どう見ても男の姿の時とは違うのでバレる事はないはず。
「そうかい、そうかい。お嬢ちゃんはお手伝いをして偉いねぇ。サービスしないとねぇ。」
「わ、悪いですよ。」
いつもサービスしてもらってる量よりもさらに多くしてくれた。
身長が低くなったから、ぱっと見小学生だから孫のような扱いになってるんだろうけど、騙しているわけでもあるから罪悪感しかない。
「今日はいつもより多くもらっちまったな。紅桜君、重くないかい?」
「これぐらいなら大丈夫です。」
前が見えないぐらい積み重なった荷物だけど、一つ一つがそこまで重たくないので大丈夫!
前方と足元だけにはしっかりと注意してあとは家まで運ぶだけ。
「紅桜君、学校はどうだい?見た目が変わればクラスの子からの視線も変わってくる。全員が理解してくれればいいが、そうともいかないだろ?」
「実は、今はちょっと特別なクラスにいるんです。だから、元のクラスの子には知られてません。ただ、理解してもらえない子はいますよ。…こっちとしてはせっかく同じクラスだから仲良くなりたいんですけどね。」
満さんが自分のせいで学校に来なくなったから、なんとかして仲良くなってもらえるようにしたい。
学校に来てもらえないから、お家がわからないこともあって今はどうしょうもないけど、いざ会ったときに仲良くさしてもらえれるように頑張りたい。
そういえば、黒咲さんはミチル沢のお家を知っていたような…?!
この前もお家まで迎えに行ったって言ってたし、明日教えてもらおう!!
意外にも仲良くなるための第一歩が踏み出せそうになったので嬉しくなる。
鼻歌とまではいかないけど、歌いたくなる気分。
しかも神様はチャンスをくれようとしたのか、公園に差し掛かろうとした時、ベンチに座っているミチルさんを見かけた。
私服姿は初めて見たけど、イメージ通りの服を着て顔も同じだから間違えようがなかった。
「満さ〜」
呼ぼうと思ったけど、呼ぶのを辞めた。
学校でならまだしも、学校の外で会うのを好むタイプじゃないに決まってる。
ここであっならむしろ悪い印象がつくに決まってる。
「紅桜君、どうした?」
「うんん。なんでも」
『放しなさいよ!』
大きな声で叫ぶ満さんの声がした。
目を離した好きに数人の男に囲まれて腕を掴まれていた。
『どうせ1人でしょ?』
『俺らと遊ぼうぜ。』
『ツンツンしてないでさ。』
いかにもナンパしてそうなチャラ男が、よくあるセリフを喋っていた。
「あれは、ちと乱暴だな。」
おじさんが持った荷物をそこら辺に置いて関節を鳴らしていた。
顔が怖すぎ!?
ちょっと荒れるかもしれないからあまり暴力的な解決をしてほしくないよ。
何かいい方法ないかな?
……あっ、そうだ!
「おじさん、ついて来てね?」
「何をするんだい?」
先に駆け出して満さんの元に行く。
「お姉ちゃん!!」
「え?」
いきなり、お姉ちゃん呼びで抱きつかれたら驚くよね。
でも、こんな体型だから、男共は完全に信じ切ってた。
「何、妹ちゃんいたの?可愛いね。」
「これは姉妹丼できるんじゃね?」
飛躍的な発想をしてる。
しかも声に出してる馬鹿がいるけど、今は演技に集中しないと。
「お姉ちゃん、まだ帰らないの?」
「まだって…」
「何、親にそろそろ帰らないと怒られる系?大丈夫だって。ちょっと付き合ってもらうだけだから。」
「でも、パパ怒ると怖いの。」
必死の演技で注目は俺に。
満さんはすんなり腕を離してもらえたし、あとは地獄に落とすだけ。
「いいから行こうよ。どれだけ怖くても、俺たち強いから。」
「そうなの?なら、もうパパ来てるけど、追い払ってくれる?」
すると、3人のうしろからパパ役(おじさん)がとても元気そうな笑顔で立っていた。
「パパ、この人たちが一緒に来て欲しいってずっと言ってるんだけど、まだ遊んでてもいいの?」
「もう遅いから、今日は帰ろうね?それと、おめえら、喧嘩強いんだって?うちの子達に手を出そうだなんていい根性してんな。ちょいと面貸せや。」
途中無表情から関節ポキポキがもろそっち側の人間。
あれだけイキってたやつらも、腰をヒクヒクさせなが去っていった。
「おじさん、演技でもちょっと怖すぎるよ。」
「すまんすまん。パパと言われてな、感情が昂ってしまった。」
お互いにヘラヘラとしてた。
でも、満さんの方は申し訳なさそうにそっぽを向いていた。
「あ、あの、迷惑でしたか?」
「そ、そうね。あんなの、1人でどうにかできたわよ。それに、なんで私を助けたの。意味わかんない。」
「仲良くなりたいからじゃ、ダメですか?」
「本当に意味わかんない。なんで助けたのよ。ほっときなさいよ。」
あまりいい事は言ってもらえなかった。
別にお礼が欲しいわけでも、これで高感度稼ぎをしているわけでもないから構わないけど、やっぱり残念だった。
「…ごめんね。おじさん行こう。」
「あ、あぁ。」
肩を落としながら背を向けるしかなかった。
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