第12話親友と再会してしまった!!??

おじさんだけに任せてた方が良かったかもしれない。

俺が出る必要なんてなかったのかもしれない。

後ろの方で少し声がしていたけど、振り向く事はできなかった。


「紅桜君、良かったのかい?」

「うん。良いんだ。」


しゃべる気力が減ってしまったから帰り際はほとんど無口だった。

変に雰囲気が悪くなってしまったから一緒に歩いていたおじさんには悪いことをしてしまった。


「おじさん、…また今度ね。」

「ま、気にすんな。心の中ではありがとうって思ってくれてるさ。」


手伝ったお礼として、ケーキを渡されて帰った。

おじさんも何か察してくれていたのか、詮索するようなことは言わなかった。


その後家の中でも満さんについて考えていた。

どうすればよかったのだろうか。

自分が現れなかっらよかったのだろうか。

手を出さなければ怒らせるようなことにはならなかったのだろうか。

気づけば朝を迎えていた。

考え込んでしまっていたから時間の経過に気づかなかった。


そう言えば、若葉先輩が今日は全校集会があると言っていた気がする。

朝から外に並ばされるのは鬼畜の所業だ。

せめて体育館なら良いんだけど、基本グラウンドでするのが当たり前の学校だから困ってしまう。


「いつものように屋上かな。」


基本全校集会がある時は屋上に隠れている。

ここで豆知識だけど、全校集会とかの面倒くさい行事は保健室で休むと伝えてから行きたいところに行けば先生に怒られずに済むよ!

これは、前のクラスの委員長こと黒瀬さんの情報だよ!


「氷柱姉、行ってきます。」

「今日は一日空いてるから、帰りたくなったらいつでも帰ってきて良いわよ。」


昨日帰ってからも悩みっぱなしで、氷柱姉にも心配を掛けてしまって今日も気を遣ってくれてる。

でも、1日経つと思ったよりも頭が楽になった。

昨日のことなんてどうでもいいと思えるほど、頭の中はクリアで今はなんともない。


「今日もいつもの時間に帰るよ!!」


元気な声を出して、もう大丈夫だと見せつけた。



この体で登校始めてからある程度時間が経っていると思っておたけど、登校中の高校生の視線が多い。

慣れてはしいし、慣れたいんだけど現実はそうとはいかなかった。


保健室に着いたら、ドアの前に不在のボードが掛かっていた。

もちろんドアも開いていない。

今日がたまたまなのか、それとも普段からなのか。

もし普段もだったら、委員長が言っていた事を信じて屋上に逃げていたこと先生にバレていることになるんだけど!?

大丈夫だよね!?バレてないよね!?


ここにいても何もできないので、生徒がいなさそうな道を使って屋上に向かった。

今日は風が強いのか、屋上の扉が重く感じた。


「紅桜!!」

「?!」


屋上の扉を開けると、いきなり大声で名前を呼ばれたので、ビクンと跳ねてしまった。

それに、名前を呼んだのが樹だったから、いろんな感情が渦巻いて驚いた。

樹なら気づいてくれるかもしれないという淡い期待を少しでも持っていたのかもしれない。

喜ばいしい気持ちが溢れる反面、軽蔑されるかもと悲しい気持ちがぶつかり合う。


「ごめん、人違いだわ。叫んで悪かった。」


すぐに謝られて、いろんな気持ちに裏切られた。

樹は気づいてくれなかった。


「いつもここにくる奴がいるんだけど、そいつかと思って。」

「そ、そうですか。」


ただ単に、ここに来たかもしれない男の紅桜だと勘違いしただけだった。

本来なら他にダメも来ないから、その反応でもおかしくない。

私が紅桜だって言ってないんだから、元々分かるわけがないんだ。


「なんで、泣いてるんだ?もしかして、嫌な事があったとか?」


自分でもわからない。

分からないことばかりだ。

気持ちの整理がつかない。


「俺が邪魔ならどこか行くよ。待ってる奴は、もう来そうにないから。」


やっぱり、俺を待っててくれてたんだ。

この姿のまま、俺が紅桜だと言いたかった。

でも、それを言える勇気はなかった。


「‥‥あの!‥どんな人を待ってたんですか?」

「親友だよ。」


迷うことなく即答で言ってくれた。

親友だとはっきりと言ってくれた。


「あの、その人について詳しく話してくれませんか?」

「どうして?」


なんて答えよう。

当たり前問いなんだけど、予想してなかったから面食らってしまう。


「ま、いいよ。それよりいつまでそこに居るの?立ったままだと辛いだろ?」

「は、はい。」


焦ったけど、どうにかなってよかった。

グランドが見える位置で座れそう場所に腰を落とした。


「話す前に、名前教えてよ。」

くれないに桜で、紅桜あおって言います。」

「へー。紅桜あおちゃんね。俺の親友と同じ名前だな。この学校にあいつと同じ名前の子がいたなんてびっくりだよ。何年生?」

「2年生、です。」

「学年も一緒なんだ。クラスは?」

「えーっと、特別クラスって言う特殊なクラスにいます。」


ここまで素直に答えちゃったけど、どうしよう!?

このままだとバレちゃう!?

自業自得なんだけど、でも、本人も気づいてないみたいだし、大丈夫かな?


「そんなクラスあるのか。」

「特殊な事情がある子が集まってるクラスなので、学年が違う子もいるんですよ。」

「そうなんだ。君はどんな事情があるの?」


このパターンの質問なら大丈夫!

ちゃんと氷柱姉と話し合って予習済み!


「実は、病気にかかってます。突然発作が起きるので入院と退院を繰り返してるんです。」

「そうだったのか。悪いことを聞いちゃったな。」

「いえいえ。それよりも、親友さんの話を聞かせてください。」


もう少し聞かれても大丈夫だけど、いつボロを出してしまうか分からないので、強引にでも話を変えた。


「出会った最初はあいつのこと大っ嫌いだったんだよな。」

「えっ!?」


そうだったの!?

もしかして、今まで無理させてた!?

今から愚痴ばかり聞かされる!?


「あいつさ、友達になる前からいつも何かを我慢して生きてたんだよ。当時はさ、なんで我慢して生きてるのか分からなかったからさ、バカな奴だと思ってた。あんなの見てたらこっちまでイライラしてきてた。だから、あいつに遊びに行くよう誘ったんだよ。」


それは今でも覚えてる。

いきなり知らない人から声をかけられてびっくりしたのを覚えてる。

でも、どうして声をかけたんだこう?

今の話の流れを聞いても全然ピンと来なかった。


「どうして遊びに誘ったんですか?普通は殴りかかったりとかじゃないんですか?」

「しないしない。イラついてたのは本当。でも、俺がそいつに求めてたのは元気に生きて欲しいって事。苦しそうに生きてたからな。」


当時はそんなふうに見られてたんだ。

自分ではちゃんと隠せてると思ってたから、そこには充分驚いた。


「で、そっから、あいつとつるむようになって親友になったんだ。あいつも段々自分を出すようになって、俺も嬉しかった。まぁ、まだ何か隠してるっぽいけど、これ以上は求めない。親友にも踏み込まれたくない一線はあるからな。」


とても良い親友を持って涙がまた出そうだ。

ここまで俺のことを考えてくれてるのは氷柱姉達だけだと思ってたけど、もっと近くにいたんだ。


「今でも親友として絡んでたんだけど、最近あいつ学校に来なくなったんだ。」

「事情は聞いてるんですか?」

「体調が悪いって話だけど、本当かどうか怪しいけど、あいつが話したくないことならしょうがない。」


嘘だってバレてた。

でも、素直に隣にいますとも話せない。

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