第6話学校に行きます

ゴールデンウィークが終わった。

せっかくの連休が、あっという間に終わった。


「学校に行きたくない。」

「何言ってるの。ちゃんと行かないと一人暮らしはやらせないわよ。」


軽い気持ちで言ったら、案の定怒られてしまった。

分かってはいたけど、やっぱり休みたい。


「ほら、起きなさい。」


被っていた毛布を氷柱姉に取られてしまった。

冷気が肌に触れてブルっと震えてしまった。


「朝食は作ったから、早く食べなさい。」

「はーい。」


眠たい目を擦りながら声を出す。

まだ寝ていたいけど、ちゃんと行かないといけない。

ここで暮らして行くにはそれが条件だから。


「氷柱姉、行ってくるね。」

「約束をちゃんと守るのよ。」


ご飯をささっと食べて学校へ。

あまり乗り気はしないけど、行くしかない。


学校に近づくにつれ学校の生徒が多くなる。

この身長だから下から見上げることになるので、見慣れているはずの景色とは異なって見えた。

それに、周りには下級生も居るはずなのに、自分より大きな生徒ばかりで少し怖くなる。


校門に着くと一旦足を止めた。

この体になって初めての登校。

モヤモヤした気持ちが駆け巡る。


「頑張るって決めたんだ!」


意を決して一歩前に出る。


「お嬢ちゃん、ここは小学校じゃないよ?」

「ひゃっ!?」


一歩踏み出た足が下がる。

誰かに肩を触られて声をかけられてしまった。


「ご、ごめんね。驚かせるつもりじゃなかったんだよ。」


受け身の体制になってしまったので、話しかけてきた生徒に気を使わしてしまった。


「す、すみません。つい驚いてしまって。」


俺は一旦謝罪した。


「いいよ。気にしてないから顔あげてよ。」


そう言われて顔を上げる。


「え?」


目の前の中性的な容姿の生徒。

俺はこの生徒を知っている。

広瀬ひろせ永久とわ

今までつるんでいた同級生。


「?どうかした?」

「う、うんん。少し女性のような男性だなと‥‥。」


固まってしまっていた時間が長かったせいで疑問を持たれてしまった。

誤解されない様に受け答えをすると今度は向こうが驚いた顔になった。


「よく僕が男の子だって分かったね!いつもは女の子って言われるのに……君で二回目だよ。」

「い、いえ、似ている人がいたので。」


咄嗟のことだったので、気にせず話してしまった。

最初にあった時も同じようなことを話した気がする。

とはいえ、ここで変に話し込まれても困るので、先に行くことにした。


「すみません。私は急いでいるので。」


俺はペコリと頭を下げて、歩き出そうとした。


「君、ダメだよ?小学生は入っちゃダメなんだよ?」


腕を掴まれてしまった。

そう言えば、誤解まだ解いていなかった。


「私、小学生じゃないです。」

「嘘はダメだよ?もしかして学校にいるお兄さんかお姉さんの忘れ物を届けに来たの?それなら僕が渡しておいておくよ?」


さらに変な誤解をされた。

というか、身長で小学生だって決めつけないでほしい。


「本当に小学生じゃない、です。私、高校2年生です。」

「背伸びしたい気持ちは分かるけど、嘘はいけないんだよ?」

 

背伸びも何も本当だから!

どうしたら信じてくれるとだろう。


「おーい、何してるんだ?うぉっ!?かわいい幼女いるじゃねえか!?」


どう誤解を解こうか悩んでいると、1人の生徒が近っいてきた。

あろう事かまたいつもの連れだった。


壱課いちか神事しんじだ。

今日も少しチャラい着こなし。

何より、俺に対して幼女発言。

見た目がそうだからと言って、口に出すところを見ると神事らしい。


「神事君おはよう。実はね、この子が学校に用事があるらしいんだけど、小学生だから入っちゃいけないから注意してたんだよ。」

「やっぱり小学生だったのか。」

「私、高校生、です。」

「どっちなんだ?」


俺と永遠の言っている事が違うので混乱する神事。

俺としては早く誤解を説きたいけれど、2対1では部が悪いかもしれない。


「神事君も言ってあげてよ。」

「ん~~別にいいんじゃないの?この子もここが高校だってわかってるみたいなんだし。それに本人が高校生だって言ってるんだからさ。」

「ちょっ!?」


最悪力尽くで追い出されると思っていた。

けれど、神事は俺の言葉を信じてくれて、味方になってくれた。


「信じてくれて、ありがとう、ございます。では、私は急いでいるので…。」


俺は一例してから、軽く走るようにその場をさった。


「神事君、よかったの?」

「いいでしょ?あんな大人しそうな子があそこまでこだわってるんだし。それに、幼女を縛り付けるのは良くないと思う。」

「………。」

「いや、その蔑むような目はやめて!?最後のセリフは自分でも悪いことぐらいわかってるから。」




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記憶を辿って保健室に向かった。

あまり訪れることはなかったので、記憶の場所と違っていたらお手上げになってしまう。


「……あった。」


記憶は間違っていなかったようだ。

保健室と書かれている看板があった。

一旦深呼吸して、ノックをした。

そのまま、ドアをスライドされて中に入る。


「2年、霜雪しもゆき紅桜あおです。」

「はいはい。」


返事があったが、どこにいるのか分からない。

あたりを見渡してみたが先生の姿はなし。


「こっちこっち。」


声のする方に顔を向ける。

そこにはドアがあり、隣の部屋に繋がっているようだった。


「これって、部屋に来いってことかな。」


入ったことのない部屋、ここよりも緊張してしまう。

意を決して入ろうとしても体がなかなか動かない。


「氷柱姉との約束だから。」


勇気を振り絞って扉を開く。

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