第15話みんなで謝りに行きます


気がつくと保健室のベッドに寝かされていた。

あの時倒れたのは満さんに精神的なダメージを受けたからだと思っていたけど、体調面も悪かったらしい。

黒咲さんに鏡を持ってきてもらい、覗いてみると自分の顔は青白くなっていた。


「先輩、ゆっくりしていてください。」

「ごめんね。」


保健室の先生がいないので黒咲さん1人がやってくれたらしい。

先輩である私がしっかりといけないのに、こう言う時にただ寝ているだけしか出来ないのは歯痒い思いだ。


「満ちゃん、帰っちゃった、よね?」

「知りません!あんなすぐ怒る先輩、どこかに行っちゃえばいいんです!」


今は頭に血が上っていないとはいえ怒りは治っているように見えない。

喧嘩をしてしまったから許せないんだね。


「黒咲さん、怒ってくれるのは嬉しいよ?でもね、喧嘩は違うと思うの。私は、みんなが仲良く授業をできるようにしたいの。満さんが私を受け入れられないなら、受け入れてもらえるようにしたいの。」

「先輩‥‥。」

「だから、一緒に謝りに行こう?きっと許してくれるから。」


今日は気持ちの整理をしたいだろうから、一旦解散してそれぞれコンディションを整えるのに専念した。

そうじゃないと私が今にも死んでしまいそうなほど瀕死状態だからなのもある。


家に帰るとやっぱり氷柱姉に心配されて、殺意を沈ませるのにとても時間がかかってむしろそっちの方が大変だった。

なんたって、学校に連絡しない条件として一緒にお風呂に入ってほしいと言い出だすんだもん。

もちろん、一緒にお風呂に入っておかしな事が起きないはずもなく、無抵抗のまま体をいじられてしまって二度目の絶頂を見られてしまうことになった。


「酷よ。そこまで良いとは言ってなかったのに…」

「でも、気持ちよさそうだったじゃない。」

「気持ちは…良かったです///でも!!それとこれは別の話!!次からはちゃんと言ってよね。」

「ダメとは言わないのね。私の妹はやっぱり可愛いわね。」


手のひらで弄ばれてあまり良い思いはしなかったけど我慢することにした。

どうせ何言っても氷柱姉を止められないし、もう諦めてポジティブに考えるしかないんだ。


そして次の日、学校に行ってみるとやっぱりミチルさんは来ていなかった。

なので、黒咲さんに満さんの家を教えてもらい2人とあの場で伸びていた1人で行くことになった。


「先輩、本当に大丈夫ですか?」

「私は大丈夫。」

「私は初めて満ちゃんのお家に行くから楽しみだよ!」


黒咲さんは私がまた酷いことを言われるかもしれないと心配しなてくれている。

それでも、今後同じような事は何度だってあるかもしれないから今のうちから乗り越えていかないといけない。


「満ちゃんのお家って大きいのかな?それとも、少し小さめかな!洋風かな和風かな!」

「黒咲さんは満ちゃんのお家で遊ぶ事はあったの?」

「少しだけですけど。ゲーム機とかはたくさんありました。」


解釈一致だけど不解釈一致なんだよね。

似合いそうで似合わない。

似合わなそうで似合っている。

そんなふうに感じだ。


「満ちゃんとゲームしてみたいな。」

「実はですね。満先輩のお家、お菓子とかもたくさんあるんですよ。おうちにお邪魔さしてもらった時、よくもらってました。」

「そうなんだ。満さんのお家ってお金持ちだったりするの?」

「多分そうだと思います。」


よくお金持ちのお家の親は厳しいと聞くけど、それでひねくれちゃったのかな?

本当は優しかったりするし、拗らせた可能性はありそう。


「2人とも、さっきからどうして私の話を無視するの?」

「若葉先輩、今から謝りに行く自覚ありますか?」

「若葉先輩は、自分の過ちを制裁する気ありますか?」


質問をしてみたけど全く心当たりがないような反応をして、ここまで能天気な先輩だったのかと痛感させられてしまう。

最初はおかしな先輩だと思っていたけど、少しは優しくて、変態で……あれ?そこまで最初の印象と変わってないかも?

ともかく、少しでも頼れる先輩かもと思った自分を呪いたい。


「先輩、ここが満先輩のお家です。」

「‥…?!」


紹介された場所を見ると目を大きくしてしまった。

とても大きな一軒家で、高級車が止めてありそうだった。

黒咲さんは満さんの事をお金持ちかもと言っていたけど、見るからにお金持ちの人だった。

この家を見て断定的な言い方をしないあたり、もしかして黒咲さんのお家もお金持ちだったりするのかな!?


「ごめんください、黒崎美和です。満先輩に会いにきました。」


黒崎さんがインターホンに向かって話すと、厳重そうなセキュリティーをあっさりとくぐり抜けてお家の中に入れてもらえた。


「おばさん、こんにちは。」

「こんにちは。よく来てくれたわね!それにそっちはお友達の子?」

「あ、えーっと、満さんの同級生の霜雪紅桜といいます。」

「私は満さんの先輩の若葉夜宵です。今日は突然訪れることになりすみません。満さんに会いに来ました。」


満さんのお母さんが登場すると若葉先輩の態度が一変し、淑女になっていて驚いた。


「これは丁寧に。ですが、娘は出かけてまして。」


おうちに居ると思っていたけど、どうやら出かけているようだった。

そういえば、チンピラに絡まれていた時も、学校に行ってなかったはず。

登校拒否をしている日は、どこかに出かけてるのかな?


「そうなんですね。では、後日また来ます。」

「待って、待って。もう少しすれば帰ってくるはずなので、中でお話でもして待ちませんか?」

「お話ですか?」

「娘の日頃のお話など聞きたいので。」


言われるがままに満さんのお母さんにリビングへ案内された。

建物の見た目から予想はしていたけどあまりの部屋の広さに驚愕してしまう。


「どうぞ、お座りください。」


お茶やお菓子などを出してもらい、若葉先輩は嬉そうに食べ始めた。


「それで、最近の娘の様子はどうですか?登校をするようになったと思ったら、また行かなくなってしまって。」


その言葉を聞いて私たち3人の表情が強張った。

見透かされているような眼差しが、私たちを襲った。


「あ、あの、その…、学校に来なくなった原因は私にあると思います。あ、でも、いじめとかじゃないですよ!?その、喧嘩をしてしまって。」

「せ、先輩は何も悪くないです!私が、喧嘩をしただけです!」

「あらあら、これはどう言うことかしら?ともかく一旦落ち着きましょ?」


なぜから、満さんのお母さんに宥められる事になっていた。

とても怒られるのかと思っていたけど、見た目通り優しい方みたい。

黒咲さんと一旦落ち着いて、昨日の出来事を伝えることになった。

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