羊の書　

その世界には現在、人間と動物や獣達が暮らしている。
だが、その人間達がすっかり忘れてしまう程の過去には確かに人では無い者達も彼等と共に一緒に暮らしていたのだった。
古すぎる程の歴史を持つある一つの国。
その国の王は人では無い者との交配種の末裔と今では噂が残るだけで、噂をしている当の人々はその噂を最初から信じてはいない。何故かこの世界の人々は、人では無い者達は全て御伽噺の産物であり、存在する事はなく、それに伴って伝え聞かれている様なお話や口伝もそれは幻想や妄想の副産物なのだ…そう、思い込んでいる世界。
だが、その世界の当たり前がゆっくりと揺らぎだす。
切っ掛けは小さなことだった。
この先、この歪んだ世界はどうなって行くのか…。
彼はその時々を記述する。