第3話 前友 新加入の美女と楽しい熊退治リョーマいなくて大丈夫 ?


ボルトは辞めたさせたリョーマと入れ替わりに、新しい冒険者を連れて来たんだ。

それは彼を追放して本当にすぐの事だった。


目障りなリョーマが辞めるのを今か今かと心待ちにして、何から何まですっかりと根回ししていたのだった。


(目の上のたんこぶみたいなリョーマがやっとのことで出て行ってくれたしな、ここからは美少女ちゃん達の出番だぜー !!)


ボルトから新しいメンバーが紹介された。

「聖女ポトスと賢者ブルックリンだ。今ここに、ラビアンローズ至高の時を迎えた !!」


ポトスはふわふわとした美しく長い金髪で、この世の者とは思えぬ程の絶世の美女だった。


紹介を受けたSランクパーティー、ラビアンローズのメンバーはその美しさに息をのみ、ひとつの言葉も出せない程の衝撃を受けていた。


ポトスの隣にいるとかすんでしまうが、ブルックリンだって相当な美人なのだ。


 それと同時に、エメリアとルイは内心、ああ~そういうことか !! と思っていた。

ボルトはきっと、この二人の美女をどうしても迎えたくてリョーマを追い出したのだと、すぐに結びついた。


かたやルイは、リョーマをとても慕っていた。先輩として、人として。

だからまだ突然の失踪通告に、心が追い付いていなかったのだけれど、これでその謎が少しだけ解けた気がした。


少し前に……「アイツは辞めたぞ。君の事は何とも思ってないと言ってたよ。本当にひどい奴だよね」というボルトの言葉で知らされていたのだが。


ボルトの性格なんて解りきっているから、そんな言葉は真に受けないが、ルイに一言もなく去った事は真実だ。心は揺れている。


彼女はもしもリョーマが誘ってくれたならば、付いて行きたかったんだ。


そして残るもう一人、カエラの考えはルイともまた、少し違った。

紹介された二人の職種は、聖女と賢者。しかもそれらは上位職であり、僧侶の自分は見事にかぶっていて、大きな危機感を感じていたのだ。


ひょっとしたら、次は私を追い出す気なのかしら ? という疑問を真っ先に抱いた。


実際のところボルトは、可愛くて仲良しのカエラを追い出す気など全く無くて、ただ単純に美女を加入させたいのが一番の目的だった。それに次いで聖女、賢者という肩書きをなんとなく良いモノだと感じて、バランスも考えずに採用したのだ。


 それでも、仲間に配慮もなければ相談もしなかった人事には、疑心暗鬼が生じても仕方がないよね ?


彼はただ単純に、自分の知る限りで最高の美女二人が加入して、心の底から満足していたのだ。


「よろしくね !」


  二人の挨拶に快く応じたのは、何も疑問を感じてないエメリアだけだった。


この日は軽く肩慣らしの依頼をこなして親睦会をする予定で、依頼の内容はレッドベア3体の討伐。単体Bランクの魔物だ。


Sランクパーティーのラビアンローズにとっては、そうとう余裕のある依頼だ。

 依頼失敗なんてあり得ないだろう。

新メンバーとは初めての討伐なので、かなり軽めにしたのだ。


ボルトはヤル気満々で、意気揚々ようようと、5人の美女を従えて出発したのだった。


聖女ポトスはボルト以上に有名で、しかも、他のメンバーも美女ばかりとあっては、街やギルドでは非常に注目を浴びた。


武装して大通りを進むと、沿道からは数々の声援を浴び、多くの人が足を止めて、手を振り眺めている。


まるで英雄のようだった。リョーマを差し置いて(俺たちもやっとここまで昇ってきたんだな)と、ボルトは感慨に浸っていた。



新成ラビアンローズ船出の花舞台としては最高だった。

スルスルとSランクまで上り詰めて、これからはずっとこんな声援が送られるのだと思えた。


ボルトはかつてない程の、天にも昇る心地を味わい、新メンバーも予想以上の歓声と盛り上がりに、Sランクパーティーに加入したという喜びと実感が湧いていたのだった。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



一行は町を出て草原の道を順調に進んだが、やがて森に入ると、行く先をさえぎる魔物が増えてスピードが落ちた。


「おいおいエメリア、のんびりしてんじゃないぞ。さっさと終わらせて親睦会だからな !!」


「わかってるわよ ! でもね、何だか今日はこの森、スゴくたくさん魔物が出るのよね。ゴブリンばかりかオーガやトロールまで !! ここってこんなんだったっけ ??」


エメリアはリョーマと使い魔の索敵が異常過ぎて、あまり敵に遭遇しないことに慣れてしまっていたんだ。彼女が言う(スゴく魔物が多い……) 実は、今回の遭遇率が通常なのだ。


「私も前を手伝いましょうか ?」


ブルックリンが申し出た。


「ありがとう、頼むよ、君の実力を見せてくれ」


ブルックリンはウズウズしていたのか先頭に出ると、魔法も駆使してどんどん魔物を倒していった。前衛が二人になったことで随分早く進み出した。彼女は優秀な賢者だったようだ。


「この辺はゴブリンが多いわねえ」


「ハハハ、ゴブリンくらいは、いくら出ても問題ないさ。何と言っても僕らはSランクパーティーのラビアンローズだぜ !!」


「私も聖女としてSランクパーティーを支えられると思うと、とても光栄でしてよ」


「ああ、君がここに居てくれるだけで心が安らぐよ !」


そんなことを言っているうちにゴブリンがうようよとあふれてきた。進んだことで、逆に魔素の濃いエリアに進んでしまったのかも知れない。


 もう既に、メイジゴブリンやハイゴブリンの上位種もチラホラ出て、更にトロールも混ざっていたんだ。

エメリアは相当厳しそうだ。


シーフとして優秀なエメリアも、コタロー達の索敵には遠く及ばない。


リョーマは索敵に魔狼コタローを中心にしてウルフも使い、上空からはブルーコンドルのセリカが常時警戒していたのだった。

 そうなると、他愛もない敵なら未然に片付けてしまう。


もちろん、敵の多いエリアが事前に分かっていればそれを避けてルートを選択していた。ゴブリンの巣の脇を通るような下手は打たない。そもそも、近隣のゴブリンの巣の位置ぐらいは頭に入っている。


今のラビアンローズのメンバーでは、コタロー1頭分の索敵能力にも及ばないだろう。今までリョーマに任せきりだったツケがまわって、迷子にならないのが不思議なほどだ。


「ちょっとボルト ! もうダメーーー、こっち助けてよ !?」


「はあ ? こんなところでかよ ! しょうがないな !」


ボルトも前に出て全員で戦うが、ここまで数が増えると、さすがに収拾もつかず難航していた。

 やはり、ボルトに助けを求めるのが、僅かに遅かった。


「きゃっ、 ああああ~~~ !!!」


この苦しいところで、あろうことか、エメリアがゴブリンアーチャーに足を斬られて、倒されてしまったのだ。


 斬られて倒れ、動けなくなった美しい人間の女の子が目の前に現れれば、この下等なミドリの魔物はなんの容赦もなく欲求を解放した。



「ブモモモモモモーー !!!」

「ブモブモモーーー !!!」

「ブモッ ! ブモッ !」



次々とゴブリンが覆い被さる。エメリアに触り、抱き付き。揉まれ、舐め回されいた。太ももに抱きついて腰を振っている強者も居た。

 

 エメリアとて、イッパシの冒険者だ。もしものことがあれば受け入れなければならないという、それなりの覚悟はある。只の、か弱い女の子ではないのだ。


 それでも、ここまで悲惨な目にあっては、たまったものではなかった……


 たかがゴブリン、雑魚だと下に見ていたのに、その雑魚でうす汚れた魔物の下品な性欲に犯され、斬られた傷をえぐられる痛みで、今まで感じたことのない程の恐怖と凌辱感で恐慌状態だった。


 「ああああぁぁ〜」



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