第6話 前友 美女と楽しい熊退治はリョーマロスの厳しい戦い

 

ボルトたちはかなり苦戦していた。その時エメリアがハイゴブリンに足を斬られて倒されてしまったのだ。


 次々とゴブリンが覆い被さる。エメリアに触り、抱き付き。揉まれ、舐め回されいた。太ももに抱きついて腰を振っている強者も居た。


「きゃっ、 ああああぁぁ~ !」


 エメリアは恐慌状態だった。

 


それに気が付いたボルトは、渾身の力を振り絞ってゴブリンを薙ぎ倒していった。


  「うおーーーーー !!」


 一体、二体、三体と次々と剥ぎ取っていった。

 ボルトの凄まじい強さは10体や20体のゴブリンなど、ものともしなかった。

 すんでのところで、どうにかエメリアを救いだした。


「大丈夫か ? エメリア !!!」


「ううっ ありがとう ↘↘↘」


更に、ポトスが回復魔法を掛けると足の傷は元通りに戻ったが、かなり危ないところだった。精神的にも相当まいっているようだ。



この後はボルトが全力で攻撃を続け、他のメンバーもサポートすると、何とかゴブリンを退けたのだ。


「危ないところだったわね !」


ルイがボルトをなだめようとするけど彼は荒れていた。


「何でこんな、あたふたするんだよ !! クソッ !」


リョーマの不在が索敵や、メンバーの動きにまで影響していたのだ。

彼らは司令塔を失って、まるで油の切れた機械のようだった。それは、ギシギシときしむ音が、こちらにも聞こえてきそうなほどに……


 それなのに、ボルトたちはリョーマがいなくなったせいで苦労していることに気付いてなかった。


 当時のリョーマの戦闘力は大したものではなかったし、存在感も発言力も控え目な彼の及ぼす力は、解りにくいものだった。


 ボルトやエメリアには届いてなかったのだ。

 もし、それに気付いていれば、追い出すようなことはしなかっただろう。


それでもどうにか苦難を乗り越え、ようやく目的地にたどり着いた。

 レッドベアは大きな魔物で簡単に見つけられた。


ボルトはここまでの道中で全然思い通りに行かないことに、苛立ちをため込んでいた。

 駆け引きも作戦も関係なく、ズンズンと間合いを詰めていく。

 ここで一気に、猛烈な攻撃をガンガンと浴びせ、レッドベアを倒してスッキリと終わらせたかった。


エメリアは怪我をしたことを考慮して中衛に下げ、代わりにボルトが前衛に出ていたのだ。


レッドベアの火魔法を避けながら攻撃する。

拮抗しているがボルトが押している。

単体Bランクの魔物に対してひけをとる彼ではない。


しかし、彼は考えることや気配りは苦手で、ヘイト管理もそれほど上手くはできていなかったのだ。これまでそういった事は全てリョーマが担って来たのだから……


そうなると残り2頭のレッドベアは横へ、後ろへと向かうのは当然の事である。

ルイとエメリアは二人で一頭を何とか抑えていたものの、少し無理があった。


 残ったもう一頭に狙われた聖女ポトス。

 実は戦闘はからきしだった。

 絶世の美女で聖女。


 誰からも崇められ一目置かれていたポトスだが、それだけに、いつもチヤホヤされ、基本屋内で治療。

 もし実戦に出たとしても必ず最後衛で、強い魔物と相対することなんて有りえなかったのだから、これには驚いた。


「ひえええええ !!!! クマ~~~ !!」


奇跡的に、レッドベアの爪の攻撃を杖で受けた。


「うわっ、うわっ、止めてーーー !! イヤーーーーーーーーーーー !!!!」


しかし、そんなことでは防ぎきれるはずがない。力の差は10倍以上あるのだから…… 彼女は簡単に吹っ飛ばされた。


「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああーーーーーーー !!!!!」


「うわっ、ひどい。大丈夫 ? ポトス !」


辛うじて、カエラが回復魔法でポトスを助けた。


「うええええっ !!」




「後ろ、ポトスが危ないわ !!」


「今、ここは離れられないぞ。くそーーー、何かがおかしいぜ !!」


噛み合わない。守りがどこかもろい。新人の二人に原因があるのか ?

ボルトはリョーマたちの力などバカにして、まさかそのせいとは気が付かない。


リョーマの戦闘能力と、新加入ブルックリンとポトスを足した戦闘能力は確実に新加入の二人の力の方が上だった。

しかし、使い魔の力も分かってなかったし、ボルトにはそれ以外のモノにまで考えが及ばなかったのだ。



 この場面だったら、リョーマたちのサポートがほしいところだが、残念なことに彼らは居ない。


 ポトスをズタボロにしたレッドベアが、今度はカエラターゲットにしていた。


「こっち、マズイわー、援護して…… キャーーー !!!」


 気付けば、今治療したポトスがいない。

 ポトスなんと、隙を見て逃げ出してしまったのだ。

 ひどいようだけど仕方がないだろう、ポトスに熊は荷が重かったのだ。


僧侶のカエラが一人でレッドベアをおさえることなどできるはずがない。

 彼女なりに精一杯戦ったものの次第にじり貧になり、最後は猛火にまかれて倒された。

 後は僧侶として、精一杯自分の命を守ることしかできなかった。


そして、カエラを戦闘不能にしたレッドベアは次の獲物を探して、ルイとエメリアの方へ向かってしまったのだ。


今度は彼女たちがレッドベアと2対2となった。


「ええー ? 2対1でも厳しかったのに、もう無理ーー !!」


ルイたちもあっさり熊の火魔法で丸焼きにされ、吹っ飛ばされ、ボコボコにされてしまったのだ。


やっと前衛の二人の手が空いて、ブルックリンがそちらへ回ったが、既に遅かった。


ボルトが最初のレッドベアを倒した時には、後方は見るも無惨むざんな状態だったのだ。


本当にギリギリのところでブルックリンが支えていたが、全員傷だらけ火傷だらけで真っ黒焦げのボロボロだった。死人が出なかったのが不思議なほどだった。


後方を蹂躙じゅうりんしていた魔物達は、一頭が倒されると危険を感じて素早く逃げて行ったんだ。


もう、ボルト達には追撃する余力はなかった。むしろ、逃げてくれて胸をで下ろすという体たらくだった。


「た、助かったぁ !」

「もう少しで食べられちゃいそうだったよーー !!」

「うええええーーー !」


「何故だっ、くそが !!!」

「まぁまぁボルト、命あってのことよ !」

「熊ごときに情け無いぜ !!」


ボルト達にとって幸いだったのは、回復職が豊富なことだった。

装備などはボロボロの真っ黒焦げになったけど、怪我や傷は綺麗に治すことができた。


逃げ出して木陰でブルブル震えていたポトスを回収して帰路に着いた。


ここでキャンプを張って立て直すという選択肢もあったのだが、今のパーティーの状態ではこの森に留まることは難しかった。


あれだけ華やかに出発したパーティーの姿は見る影もなく、まるでボロぞうきんのようだった。

町に着くと隠れるようにして、足早に、言葉もなく歩いたのだ。


当然のことながら依頼は失敗。まだ一頭を倒しただけでも、救われたのかもしれない。



しかしながら、魔物との戦いはまったく上手くいかなかったものの、彼らにとって夜の戦いは絶好調だったのだ。このパーティーはこっちの戦いは世界一だろうからね !!


親睦会で一日の鬱憤うっぷんを晴らしたんだ。


ボルトはポトスをなぐさめると二人は意気投合した。

二人の夜の相性は更に最高だったのだ。


ボルトたちは討伐依頼を失敗した腹いせに、小さな居酒屋を貸し切り、狂喜乱舞の新人歓迎会を繰り広げたんだ。


ルイとブルックリンは食事をとり軽く酒を飲むと、宿に帰ったが、 、 、 4人は帰らなかった……



そのまま7人は宿屋の大部屋に移って狂喜乱舞のお泊り会に派生した。さっきまでは4人だったのだが。しかし、7人で間違いではない。実はその後、ボルトのファンが3人乱入したのだ。


「ああ、ボルト樣とこんな夜を過ごせるなんて最高よ !」

「俺もだよ !」


「ねえ、私たちもパーティーに入れて欲しいわ❤」

「そりゃあ、ありがたいぜ ! Sランクパーティーラビアンローズは最高だぜ !」


「本当に ! 嬉しい~~ !!」


酔った勢いとはいえ彼女たちはしたたかで、憧れのSランクパーティーに入るというこの約束を忘れることなど絶対に無かった。


更に翌日も二人の加入を約束してしまい、なんと、ラビアンローズのメンバーはあっという間に11人になってしまった。


男はボルト一人で若い女の子が10人だ。この前リョーマが考えていたボルトと100人の女の子のパーティーに一歩近付いたた感じがするね !


ボルトは先日のレッドベア討伐の件でパーティーの火力不足を強く感じたので、メンバーを増やしたいとは思っていたのだ。


ただし、可愛いことが一番大事だという判断基準はボルトの絶対に譲れない条件だった。


 実はそれ以外はあまり考えてなかった。職種も構成も人柄も考えずに、酔っぱらって適当に決めてしまったのだ。


もしもリョーマが審査員なら全員不合格だっただろう。だけど全員がもれなく美人だった。さすがはボルトだ、酔っていてもそっちの目は素晴らしい !! 天才という他ないだろう。



翌日

さて、ボルトと女の子たちは昼過ぎに起きて、酒くさい息でギルドへ出掛けた。

次の討伐依頼を見つけようと思っていたのだ。


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