第10話 前友 祝ハーレムパーティー!キメラなんて楽勝 !?


リョーマが追い出されたSランクパーティー、ラビアンローズは古参のメンバー四人に準新入りのポトスとブルックリン。更に新入りの美女5人が加わった。


今まさに、男はたった一人で残りの10人は全員が美女という、ボルト念願のスーパーハーレムパーティーが完成したのだ。


 やはり先日と同じように、街の人々が歓声を送る中をキメラの討伐に出掛けたのだった。


 この前は失敗したけれど、悪い噂よりもスゴい美女集団の噂が上回ったのか、お見送りの観衆は増えていた。

 

 そうなると、やっぱりボルトは気持ち良かった。

 応援されチヤホヤされて、誇らしいきもちと、満足感で最高だった。



さて、討伐依頼がどうなったかというと、結果だけを言えば新入りの活躍 ? もあってキメラは簡単に倒すことができた。


しかしながら、彼女たちはキレイな花があれば摘みに行き、可愛いウサギが現れれば追いかけて、泥道は決して通ることは無く、薮にも繁みにも入らずだったのだ。


行きも帰りも美女たちは、言いたい放題のやりたい放題だった。

 パーティーNo.1の問題児はポトスで間違いない。

 ところが、それとほとんど同等のナンバー2が、5人増えてしまったのだ。


 ぶっ飛びママの店に、ぶっ飛びチーママが5人やって来たようなものだ。

 ダイキの街のカブッキ町なら大人気かも知れないが……


そもそも何でキレイなヒールのある靴を履いている奴がいるのに、誰も気付きもしなかったんだ ?


 それも二人もだ ! 二人もっ !!

 デートじゃないんだからさあ。


別段、ボルトも他のメンバーも、服装や持ち物を説明したり、指示したりということは無かったので、討伐に慣れていない女子だったら、これが普通なのだろうか ?


反対に新入りからアレコレ言われたり頼まれたりは物凄くたくさんあったのだ。


キメラ一匹倒すのに、ボルトは今まで感じたことが無いくらいに、疲れてヘトヘトだった。

 結局ヒールの女の一人は途中で歩けなくなって、ボルトがおぶって帰ったのだ。

 他の古参のメンバーだって同様に疲れ果てたのだった。


今回は本当に簡単な依頼だったから良かったようなものを、無事に帰れたのが不思議なほどだったのだ。


彼らは日の出ているうちに何とか帰った。ボルト一人なら、走ればすぐのところなのにだ……


「ハア、ハア、ハア、やっと帰ったぜーーーー !!もうダメだーー !!」


「私もよーー ! もうまいったわ !」


「はあああっ !」


ボルトとエメリア、そしてカエラは苦悩の声をあげた。他のメンバーも疲労の声と文句がこぼれた。


「ふえ~~、もう歩けない !」


「もう、討伐ってマジ無いわっ !!!」


更に、空腹を訴える者が多かったので夕食を食べに行ったのだ。

少しだけ反省会のような話もあったが……


「もうさあ、あんなにたくさん歩くなんて信じられないわよね。アタシこういうの向いてないわ~ !」


「そうそう、キツイよね !」


「だけどさあ、キメラなんて楽勝だったね !」


「そうだよね。ボルト一人で十分な感じだったわよね~ !」


そう言ったエメリアの言葉に、ボルトは雷にうたれたような衝撃を感じたのだった。


⚡はうっっっっっっっっっっ !!!!!!!

 確かに !!

 あんな魔物は俺が一人で楽に倒せるな……

 な、な、ななな何てことだーーー !!

 コイツらを連れて往復した、あの苦労の行軍はまったくの無意味だったというのか~~ !!!!

 くはあああ !


ただでさえ疲れていたボルトに、更なる後悔の疲れが襲ったのだった。


夕食は酒代込みで約5万ギル(日本円で約5万円)だった。


それから新入りの服が破れたり汚れたから、買ってくれと頼まれた。

 結局、二人にだけに買う訳にもいかず、アレコレ買わされて約13万ギル払った。


散々無駄な苦労をしたうえに、ここまでの分だけでも10万ギル以上の赤字だ。しかも、これには宿泊費も宴会費も入っていない。


 彼らの宿は高級な宿。もちろん宴会も最高級だ。ざっと計算しても100万ギル以上の赤字だった。


そもそも新しいメンバーになってから収支がプラスになったことが無いのだけど、彼らはまるっきり気付いてなかった。資金はどんどん減っていた。


それなのに、彼女たちは当然のように、今から更に二次会へ行こうと誘ってきたのだ。


やはりボルトもお金のことなどさほど気にせずに、普通に二次会へ行くことにした。ボルトのこういうところはリョーマよりも腹が据わっていた。


彼は10万や20万の金であたふたしたりはしなかった。この仕事は一発当てれば千や2千は軽く稼げる稼業なのだから……



この日も当然、ボルトによる夜の冒険は上へ下への大活躍だった。


新人に振り回されて、あんなにヘトヘトになっていたのに、夜は夜で人であらざる者のように暴れまくるのだ ! ボルトの底無し絶倫の体力には本当に驚かされた。


すると次第に大人数の美女たちの方が、慣れない討伐の疲れも重なって次々とダウンしていったのだ。




翌日

眠い目をこすりながらギルドに行くと、集まったのはエメリア、カエラ、ルイ、ポトス、ブルックリンだけだったのだ。


新メンバーは慣れない荒れた道を歩かされて疲れただけでなく、傷や怪我、特に靴ズレに悩まされた。見た目重視の可愛い靴なのだから当然、そんなことにもなるだろう。


それにも増して、森の中では蚊やクモの巣やヘビが多くて耐えられなかったのだ。そんな討伐に出掛けるのはこりごりのようだった。


「くうううっ 何てことだ !!」


ボルトは後悔しているようだ。


「しょうがないよ ! か弱そうな娘ばっかりだったものね !」


ポトスが慰めていた。

 〜キミが言うのもどうかと思うが……


「くそーーーー !! こんなことなら家も聞いとくんだった !!」


「えええーーー ! そこなのーー !?」


エメリアがすかさず突っこみを入れた。やはりボルトにはエメリア達がしっくりくるようだ。


そしてボルトたちは再び慣れない討伐依頼の選択からスタートするけれど、何が良くて何が悪いのかも分からない、正直に言っておバカな彼らが好転することは無いだろう。


どうしても明るい未来は想像できなかった。

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