断ち切れ――己のために、愛する者のために。

ある三人の人物の幼き日々から物語は始まる。そして、彼らの関係性を大きく変える出来事を経て、一人の少年へと物語のバトンは繋がれる。

ある日、その少年は庶民の身でありながら騎士になる事を、精霊からのお告げだと王女から任命され――――


この物語には、根幹となる大きなテーマが存在していると感じた。
それは「愛情」と「思考」だ。
受け取るだけの愛情ではなく、相互補完的な愛情。盲目的な崇拝ではなく、己を律し、時には感情のままに突き動かす思考。
それは、人間であるからこそ享受できる素晴らしい感情であり、生きる上での醍醐味だ。

それを作中では上手く描写され、時にはリアルに、時にはドラマチックに私たちの心にズシンと投げかけてくる。
己の信じるものは何なのか、愛する、愛されるとは何なのか。そう言った問いかけが、あたかも読者である私たちにまで届きそうなほど、作中の人物は懸命に、必死に、声を出す。

そしてその声が届いた時、物語はクライマックスを迎える。
紡がれてきた歴史、謎、彼らの関係性……それら全てが、読了後、余すところなく胸にストンと落ちるのだ。


最後になるが、今作は非常に満足度の高い物語である。
なのでぜひ一度、ご覧になられる事を強くオススメする。




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