第12話 ヤクザ
「クソ……なに考えてんのやクリィ!」
城の中、リュウは叫んだ。メイドのクリィとコゼット姫が消えていた。首謀者であるクリィが残した手紙によると、姫の身柄を交渉材料に戦争を辞めさせる気らしい。
何を考えている。このカレル王国で、コゼットより大切なモノなどない。王なき国に、未来はない。王は最後まで逃げることも、特攻することも許されない。そうリュウは考えている。
だから単身、リュウはヴェンジャンス帝国の城へと乗り込んだ。
◆
敵国の城内は一度、不平等条約の解消の時に来ている。詳しい内部事情は知らないが、城の構造など大体同じだ。特等席は地下にある。
「コゼット、お前のことは嫌いだった」
「いやっ……ぎゃあ!」
リュウは物陰から確認する。牢獄の中、鎖で縛られたコゼットが殴られていた。実の父親だけじゃない、母も兄弟らしき奴らもだ。
「お前は昔から生意気だったな!」
「大人しく父に国を渡せば、優しくしてやるよ! オラっ!」
「うああああ!」
地下に響くコゼットの悲鳴。リュウは日本刀を手に飛び出した。目に入る、小さなコゼットはぐったりと気絶していた。
「貴様ら! 腹ぁくくれ! ケジメをつけさせてやる!」
「お前! どこから入ってきた! ぎゃああ!」
リュウはそこにいたコゼットの血縁、七名を斬首した。
隣の房から微かなうめき声がした。彼女も暴行を受けて、縛られたまま倒れていた。
「申し訳ありません。姫さまを家族と暮らさせてあげたかった。カレル王国がどうなろうとも、私は姫さまさえ幸せならと甘い考えでした」
「家族愛のない連中や。希望は捨てろ、あと一人殺しにいく。お嬢を頼んだぞ、クリィ」
「ヴェンジャンス帝国、帝王ジェライスですね」
「せや、ボスを殺せばこの戦争は勝ちや」
クリィの拘束を外し、コゼットの身を彼女に預けた。
リュウは一人、血濡れた刀を持って上へ向かう。殴り込みは昔から得意だ。
◆
「バカな! 一人で我が玉座のまに! 我が城の兵はどうしている!」
「全員殺したんや」
玉座に腰掛けながら、ジェライス帝王は震えていた。リュウは刀を彼の喉元に近づける。
戦争ではなく、これは殴り込みだ。暴れて殺して、それで終わり。警察なんてのも来ない。
「わかった! 和平条約を結ぼう、カレル王国と我が帝国との!」
「いらん、これはケジメや」
リュウはジェライスの太い首に、日本刀を突き刺した。
転生ヤクザとワガママ姫 〜ケジメとして腹を切ったけど、今は王国の役人として税金を取り立ててるで〜 宮野アニス @a-miyano
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