概要
この世ならぬ美しさをまとう器。そこに秘められた妄執と愛憎の物語――。
好色な主君に弄ばれ、捨てられたひとりの若侍。失意に打ちひしがれた彼は、江戸の裏路地で奇妙な南蛮器に出会う……。
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- ★★★ Excellent!!!男の《情念》は艶やかに燃ゆ
衆道に耽る殿に十三歳の頃から寵愛を享け、後に棄てられた白皙の藩士 丙七郎は、殿にたいする愛増を日毎に募らせていた。しかしながらそれはやり場のないものだ。殿はすでに他の美少年たちをはべらせている。殿の寵愛は遠い過去のものとなり、殿に刻まれた傷だけがいま、丙七郎を苛めていた。
そんなとき、彼は奇妙な南蛮陶物を扱う裏店に誘われる。
殿が傾倒しているのは衆道と「焼物」――移ろいゆくひとの身と、不変なる静物。そのふたつが交錯するとき、彼の愛憎は情念の火となって燃えあがる。
女の情念とは昔からよく云います。
ですが男の情念と云わないのは何故でしょうか。男にも愛があり、憎があるかぎり、情念があらぬはずも…続きを読む