◇



 ――まあ、これでうまくいったんだからいいじゃない。毎度あり、美織先生。



 虹色に煌く砂時計を掌の上で弾ませて、黒い服の男は笑う。



 報酬は上々。まさにwin-winってやつですね、これぞ。いやー、今日はお高い飯が食えそうだ。



 絶望が極まって反転することで生まれた希望ってやつは、本当に綺麗だ。これは天界でも高く売れるよ。世界を彩る希望の万華鏡の中の素材として。



 こうやってコツコツコツコツと、俺らが集めた人間たちの小さな小さな希望が、この世界を少しずつ煌めかせて行くのは、いつも見ていて本当に美しいなとか。思ったりするんですよ。実は。これでも。





 さて皆様。そろそろ俺の正体はお分かりですよね?



 て言うか、盛大に勘違いした彼女達も本当に失礼だよなーと思うんですけど。



 死神だってさ。なーんでそんな陰気くさいものに見えるかな、このすこぶるダンディなイケメンが。



 え、待って待って。



 あなたも、見てわかんない? え、そちらのあなたも?



 マジですか……。



 いや、もう一度よく見てくださいよ。ほら、これ。



 この羽根。



 燦然とこの背中に輝く、麗しき真っ白な両翼。



 天使? あ、惜しい。



 おれはね、愛の神。キューピッドですよ。



 愛の願いを叶えるためならば、どんな手でも使うことでお馴染みの。




〈了〉

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砂時計300秒 梶マユカ @ankotsubaki

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