0-7


 丹念に、再度切り開き検分していった柔らかな臓器のちょうど真ん中に、それはあった。



 鑷子せっしで細心の注意を払って取り出したそれは、硬く硬く丸められた、小さな紙切れのように見えた。



 内臓の中に置かれていたにもかかわらず、それは一切血で汚れておらず、むしろ少しだけ黄ばんだ古紙のような風合いが見て取れた。



「先生、何を……」



 少しだけ困惑したように呟く藤原さんを制し、助手の二人に縫合の指示を出すと、私は改めてそれに向き合う。



 落ち着け、落ち着け私。



 そう言い聞かせながら、手の震えを全身全霊で封じ込め、鑷子の先でその紙を開く。



 嫌になる程ギュッと固められたその紙はなかなか開かない。力の入りすぎた指先が鑷子を滑らせ、紙の端を破いてしまう。



 聞こえるはずのないデジタル時計の、秒針が進む音が耳元に響いた気がした。



 細く長く、息を吐き出しながら、少しずつ固まった紙玉をほぐすポイントを探す。



 探す。探して、探して。



 ゆっくりと塊が綻び、解けていく。



「これ……」

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