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 きっかり五分後。




 メッセージの着信音が響く。二つ折りの端末を開けば、やはりそれは秀和からの返信だった。



『明日、本物渡したいから、会ってくれませんか』



 ますます意味がわからない。



 私はそのまま打ち返す。



『キースヘリングのグッズでもくれるの?』



 続いて、ちりん。



『ごめんそれ、ちょっと意味がわからない』



 意味がわからないことを先に始めた相手から「意味がわからない」と言われて、私は若干ムッとする。



『じゃあ、何渡すつもり』



『花束。描いてあるだろ?』



 描いてある?



 思わず教科書をめくり、最終ページをもう一度見る。



 棒人間の手にくっついた花丸。



 これのこと、なのだろうか。しかし花束って。



 どういうこと?



『俺、人生で初めて花束贈る相手は美織がいいって、ずっと思ってた』



『好きです』



 そして、こちらの様子を伺うかのように、メッセージが止まる。

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