C















 言ってしまった。でも、身体も声も震えっぱなしだから、ちゃんと言えたかどうかはわからなかった。


「え……? 今、その……」

「あ、えっと……」


 そうか。


 やっぱり、聞こえなかったみたいだった。鈴川さんは、どうしたの? という感じで首をくいっと傾げている。かわいい。でも、そんなかわいい子に、僕が告白していいものなのか、今になってわからなくなってしまった。


 鈴川さんは大人しくて、決してクラスで目立つような存在ではない。でも、休み時間にわくわくした表情で小説を読んでいる姿や、黒板消しの当番のとき背伸びをして頑張って黒板を綺麗にしようとする姿や、たまに見せる無茶苦茶かわいい笑顔がクラスの中では男女問わず評判で、裏での人気はトップクラスだと思う。


 それに対し、この僕は勉強も運動もそこまで得意じゃないし、クラスの盛り上げ担当でもない。仲のいい友達もいない。はっきり言って、モブキャラの底辺みたいな奴だ。いてもいなくても変わらない、そんな奴だ。


 そんなモブ野郎が、クラスのエンジェルに手を出したとなれば、一体何が起こるだろうか。最悪の場合、学校にいられなくなるだろう。良くても失笑されて晒し者になるのは間違いない。


 僕は、いざ鈴川さんを目の前にすると、どうすればいいのか、わからなくなった。寸前のところで、迷いが生じた。


 このまま進んで、いいのだろうか。



G.それでも告白する。


H.諦める。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る