『僕』の選択

夜々予肆

運命が決まった日(はじまり)

 とうとうこの時が来た。来てしまった。


 日が沈みつつある放課後、僕は一人で教室にいる。不気味なほどの静けさにじりじりと心を削られる。


 身体が震える。放課後にいきなり女の子を呼び出すなんて、本当にこんなことして良かったのだろうか。でももうしてしまったのだから、今更後悔してももう遅い。


 果たして彼女は、来てくれるのだろうか。とにかく、もう待つしかない。


「あの……」


 しばらく待ち続けていると、ゆっくりと教室前方の扉が開いた。そして同時に、霊峰から湧き出る水のように透き通った綺麗な声が聞こえた。


「来てくれたんだ……鈴川さん」


 来てくれた。僕は反射的に彼女の名を呼んだ。でも、緊張して顔を見ながら呼ぶことはできなかった。


 僕の前に現れたのは、一度も染めたこともなさそうな黒くて綺麗なセミロングの髪に、小さくてかわいらしい顔に大きな眼鏡を掛けている天使のような女の子、鈴川涼花すずかわすずかさんだ。


「えっと……あの……わたしに何か……?」


 教室に入り、ゆっくりと丁寧に扉を閉めた後、鈴川さんはどこか不安そうな声で僕に尋ねてきた。


「うん、鈴川さん……」


 そうだ。僕は今日――



A.鈴川さんに告白するんだ。


B.鈴川さんの胸を揉むんだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る