G

 
















 たとえ傷ついてもいい。


 今、ここで思いを伝えなければ、もっと後悔すると思うから。


 だから、僕は。


「鈴川さんが、好きなんだっ!」


 今自分が込められる、最大限の思いを込めて、僕は言葉を放った。


「わたしが……好き……」


 鈴川さんは、ゆっくりと、確かめるように、僕の言葉を反芻した。


 何か新しく言葉を紡ごうとしたけど、何も言えなかった。二人だけの教室が、再び静寂に包まれる。


 そして、太陽が沈み、外が暗くなるまで、無言の時間が続いた。



 すっかり真っ暗になった、その時だった。


「すごく嬉しい、です……だけど、そういう関係には、なれません……」


 鈴川さんは、小さな声で、ゆっくりと、そう言った。


 そうか。


 そう、だよな。


 僕が鈴川さんと付き合おうなんて、おこがましいにもほどがある。元々告白して付き合おうなんて思う方が、おかしかったんだ。


「そっか……。うん、素直に言ってくれて、ありがとう」

「はい、ごめんなさい……」


 そして鈴川さんは、僕に深く一礼した後、教室を去っていった。


 告白しなければ、もっと後悔していただろう。だから、自分の行いに後悔はしていない。


 だけど、目から涙が、止まらなかった。



 僕は誰もいない教室で一人、朝になるまで泣き続けたのだった。


FIN

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