N














 まずい、このままじゃ捕まってしまう。仕方ない。さっさと逃げよう。僕は自分の鞄を手に取り、すぐさま教室から逃げ出した。とにかくまずは外へ出よう。ここは5階だ。階段よりもエレベーターの方がいい。僕は階段の方角ではなく、エレベーターのある方角へ全力疾走した。幸いにも、廊下に他の生徒はいなかった。


 早く、早く来てくれ。僕はエレベーターの前に着くとすぐさま降下ボタンを連打した。急いでるときに限って、なかなか来ないよね。ていうかつべこべ言わずに来い。


 よし、音が鳴って開いたな。すぐに…………!?


 おい……嘘……だろ…………。













 本日、とある高校で、とある男子生徒が校舎内のエレベーターが故障している事に気づかず、誤作動で開いてしまった扉から転落死してしまうという悲惨な事故が報道された。警察の調べによれば、その男子生徒は事故の直前、同じクラスの女子生徒にわいせつな行為をしていたという事であった。



 死んでよかった、とまでは思わないが、そのような卑劣な行為を行わなければ命を失わずに済んだかもしれないと、その報道を見た人間は、そう思ったのだった。


FIN

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『僕』の選択 夜々予肆 @NMW

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