駅という場所、言葉の響きにあるもの悲しさが、ファンタジーと融合!

 不思議な駅員を見かけた主人公が、長じた後、自身も駅員となって、その不思議な駅という場所に関わっていく現代ファンタジーです。

 この「駅」という単語に、私は憧憬があります。駅には無目的の人はいない。仕事をしている駅員は勿論、旅立つ人、帰ってくる人、迎えに来た人、駅ビルでデートしている人もいるでしょうし、「ただ何となく来ただけ」という人がいない空間のように思えつつ、同じような空間である空港に比べ、トーンが落ちているように思うからこそ、そういう憧憬があるのかも知れません。

 物語も前半は主人公の駅員としての仕事や人間関係を丁寧に描く事で、後に起こるファンタジックな非日常とのギャップを生んでくれます。

 駅という人が行き交う空間が舞台になっている事を自覚させられるように、人間関係に引き込まれ、この物語がただの異能が乱舞するバトルファンタジーでない事が刻まれていく…そんな気にさせられました。

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