ヘタレの和風（かぜ）

「えこひいきって何 ?」

父親を知らない少年は、幼少の時に負った小さなトラウマから極度の人見知り、対人恐怖症になってしまった。
しかし野球一筋に生きて来た祖父の厳しい指導が奏功し、野球をする事で少年の中に少しずつ自信が芽生え始めていた。

そんな矢先に発症した “ 視線恐怖症 ”

何をやっても身が竦んで身動きが取れなくなってしまう。
視線は容赦なく少年の心を蝕んでいく。

母親の苦悩。
祖父祖母の困惑。
それを静かに見守る叔父。
家族が心配する中、少年の心は呼吸すらも覚束ない。

そんなある日、少年の元に一風変わったおじさんが訪ねて来た。

「走ろうか」

小さなおじさんはそう言って微笑んだ。

後にプロ野球選手として大きくはばたく「あぶさんと呼ばれた男」「風薫る秋」のとっぴーの成長物語…続きを読む