第7話 他者視線恐怖症
それから5ヶ月。
恵利華先生はそれこそ実の家族以上に、親身になって必死になって、あなたの症状把握の為に動き回ってくださいました。
私や母、父は当然のこと、担任の伊岡先生、ボーイズリーグの野津監督…更には4年、3年、2年、1年、保育園の年長、年少とそれぞれの担任の先生や保育士の先生まで、あなたの成長に関わったすべての人から話を聞いて、その不安障害の発症経路を探ってくださったのです。
・・・そして…
“ 他者視線恐怖症 ”
これが恵利華先生が慎重に下した結論でした。
恵利華先生は心痛な思いを噛み殺すように、毅然な態度で言いました。
「視線恐怖症は、大勢の人の中にいる時に周りの人目が気になるとか、視線が気になり金縛りにあったように身動きが取れず、ぎこちなくなってしまうという形で現れてくる症状です。
そして、常に人の目が気になっている状態のために、目の前の仕事や勉強に思うように集中できず、仕事や勉強の能率が上がらないということになっている場合が多いものです。
つまり、他者から見られているのではないかと、常に周りの人目が気になっていますから、目の前の行動が上の空状態になっていることが多いと考えられてます。
視線恐怖症は、他者の視線に対する
つまり、人から見られているのではないかと感じたときに、自分の劣等感や自信のなさのために、相手から自分が変に思われているとか、嫌われていると感じるものです。
また、劣等感や自信のなさが刺激されてしまうために、他者の視線を感じたくないという思いが行動に出てしまいます。
このために視線が気になる状態をなくそう考え、視界を狭くする状態、俯いて顔を上げない、周りを見ないなどといった行動を取ってしまいます。
しかし、こういう視線恐怖症の症状だけに目を向け、これを無くそうとして取る行動は、その場しのぎの逃避行動ということになってしまいますので、この結果はますます他人の視線に対する
そして、いったん視線に対する
つまり、視線恐怖症の場合は、うつ病や統合失調症といった心の病気が原因ではなく、
トシくんの場合、発症のきっかけは野球…しかもバッティング動作が起因した可能性が高いと考えられています。ただしこれはあくまでも推測で、しかもその具体的な発症原因は不明です。ですが今、その症状の軽減をはかる手段として、一旦野球から離れる事が第一と考えます。そして第二に大勢の視線に一斉に晒されるような場に身を置かせない、といった配慮が必要と思われます。
そして起因となったと推測されますバッティング動作の具体的な発症原因を何としてでも解明し、同じ状況に遭遇しても恐怖を感じない耐性、慣れを作る事がこの不安障害“ 他者視線恐怖症 ” 克服の有効な手段と考えます」
あなたから大好きな野球を取りあげる。
それが恵利華先生が辿り着いた結論でした。
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