下村稔成の章

第1話 ぎゅっとしてくる


ぼくの家にはパパがいない。


でも前に大きいおじさんが言った。


その代わり“ 俺がいる ”って。


大きいおじさんがパパの代わりなら、パパはいない方がいい。


それにぼくのうちは、おばあちゃんがママみたいで、ママは仕事で忙しそうだからパパみたい。


保育園のユータくんやヒナタちゃんは、パパは怒ると怖いって言ってたし、ビクトルのパパは殴るんだって。

うちは誰も怒らないし、誰も殴らないからパパがいなくてよかった。


それにうちは野球がすごくうまいおじいちゃんもいるし、友達のポロンだっている。


ポロンはシベリアンハスキーっていう大きな犬で、名前はおばあちゃんがつけた。


ホントはいつも見ているマンガ「天空の塔」に出て来る、“ 高速犬ポロ ” の真似してぼくがポロってつけたんだけど、おばあちゃんがいつも“ ポロン ”って呼ぶからポロンになっちゃった。


でもマンガの真似よりそっちの方がよかったと思った。

さすがおばあちゃん。


大きなおじさんは刑事。

すごく大きくて、すごく強い正義の味方。

日曜日になると、大きなおじさんとポロンと3人で、いつも児童公園で遊ぶ。


大きなおじさんは、時々“ さちか ” さんっていう、とても美人の友達とか、“ しま ” さんっていう、とてもおもしろいおじさんと一緒に来る時もある。

すごく楽しくて、ぼくは日曜日が大好き。


保育園ではいつもビクトルと遊ぶ。

ビクトルはすごい。

サッカーボールを地面に落とさずにずっと蹴ってるし、自転車でジャンプしちゃうし、何でも出来ちゃう。

ぼくも真似しようかと思ったけど、ぜんぜんムリだった。


保育園の先生もみんな優しい。

園長先生とかユイカ先生、アヤ先生はいつも、ぼくにぎゅっとしてくる。


園長先生はオッパイがすごく大きいから、息が出来なくなることがあって困る。


でも、ぎゅっとされてるのって、ぼくだけのような気がする。


なんでだろう ?

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