第2話 ヘタレって何 ?


おじいちゃんが野球のグローブを買ってくれた。


おじいちゃんもママと同じで、いつもはお仕事に行ってて家にいない。

おじいちゃんは、日本で一番強い野球チームの監督をしている偉い人。

だからいつもはすごく忙しそう。

でも休みの時に、時々野球を教えてくれた。


ぼくがボールを受けると、ナイスキャッチって言ってすごく褒めてくれた。

ぼくがボールを投げると、コントロールがいいって言ってすごく褒めてくれた。


野球ってすごく楽しい。

だからぼくはいつも家で練習した。

車庫の壁に向かって、ボールを投げて受ける練習。

ポロンが邪魔ばかりするけど、ポロンとボールを奪いっこするのも楽しかった。


この間、おじいちゃんとキャッチボールしてたらビクトルが遊びに来て、三人で野球をやった。


野球はビクトルよりぼくの方が上手だった。

ぼくがビクトルより上手なんて、まるで夢みたい。


でもこの時、ビクトルが急にすごく速いボールを投げて、ぼくが取れなくてボールがぼくの目に当たった。


ボールはやわらかくて痛くなかったけど、ぼくびっくりして泣いちゃった。

おじいちゃんは、男の子はそんなすぐに泣いちゃダメだって言って笑ってたけど、偶然それを見ていたおばあちゃんが、ビクトルのことをすごい目で睨んでた。


おばあちゃん、ぼくにはいつもすごく優しいけど、睨むとすごく怖い顔になる。


その時ビクトルが「トシくんってヘタレだ」って言った。

それを聞いてたおばあちゃんがビクトルにすごく怒った。

すごく怖い顔になった。


 ・・・ヘタレって何だろう ?


ビクトルは、怖えーって言って、おばあちゃんから逃げるみたいに帰っちゃた。


せっかくビクトルと野球が出来て、すごく楽しかったのに……ぼくが泣いたから帰っちゃった。

痛くなかったのに、ぼくが泣いちゃったからいけないんだ。



保育園のお迎えは、いつもおばあちゃんが来てくれる。

ママはお仕事だから来れない。


おばあちゃんと園長先生は、昔からずっと友達で仲良しだったみたい。

だからお迎えの時、いつも二人でずっと喋ってる。


帰る時、ぼくがバイバイって手を振ると先生たちがみんな集まって来て、みんなニコニコしてバイバイって手を振り返してくれる。


でも、帰りの時、先生が集まるのってぼくだけみたい。


リンカちゃんがぼくの事睨んでた。


なんでだろう ?

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