第二章 出稼ぎ聖女は追加報酬の機会を逃さない②
(…………失敗した)
私は己の
でも、閣下は一瞬不思議そうな顔をして、それから
その表情は
「ええ。……おっしゃる通りなのですが、そんな風に言われたのは初めてです。ちなみに、聖女様はどのあたりを大変そうだと思ったのですか?」
参考までにお聞かせください、と言う表情はだいぶ険しさがとれていた。
どうやら彼は私を聖女と呼ぶことにしたらしい。司教と呼ばれるよりもその方がマシかもしれない。
「…………周囲にどうでもいいことをグダグダ言われそうなところです」
あまりに言葉を
バレたら注意されるかもしれないけど、今の私には護衛もついていなければ付き添いもいない。目の前の人が
「ええ。ええ、本当にその通りです。…………それがおわかりになるということは、聖女様にもそういう経験がおありなのですね」
「ええ、まあ…………」
私は、かなりの努力をして今の階位に上った自覚があるけれど、あまりの
(もちろん引き立てていただいているし、運の良さもあるんですけどね。でも正直なところを言えば、一番は生まれながらの
あと、ビビの存在が大きい。
私に
『知識は、誰にも奪うことができないあなただけの財産よ』
と言ったビビの言葉が、今の私を形づくる大きな指針なのだ。
聖堂で暮らしていると毎日必ずある
自分の階位では
(…………それをずるいって言う人がいるんですよね)
彼らは私の努力を見ない。
ただ結果だけを見てずるい、と。贔屓をされているのだと言う。
それは、ただのやっかみ――――
聞くに
思い出すとあんまりにも
「…………閣下は、精霊魔法の
最初に聞いた時は、誰かを探しているのだろうか?
と思った。
さりげなさを
「その通りです。…………最初は、そんな人間はいないと言われました」
「私は、そちらの出した条件を一番
本当は猊下が反対していただけなんだけど、それはもちろん
(本当だったらフィアリス選帝侯家への派遣自体を突 つ っぱねたかったですし)
感情的にはそうであっても、それが許されない台所事情により、今、私がここにいる。
「…………私達は、成人していることを条件にはしませんでしたが?」
「基本、皇国は成人していない子供を国外には出しません。私はいろいろと特例なのです。とはいえ、これまでは必ず十分な護衛がついておりましたから心配したことは一度もありません。ですが、閣下は護衛を許さないばかりか、むしろこちらに護衛役をも負わせるのですから……」
「それは申し訳なかったと思いますが…………」
閣下の口元が
たぶん、
「全然申し訳なさそうには聞こえません――――そもそも、フィアリス選帝侯家は皇国に対し不義理をなさいました。また同じことが起こるかもしれませんのに…………。最初に申し上げておきますが、今回の一件は特例中の特例です」
次も許されると思うなよ、という意味をこっそり言葉の裏に
「二年前の件は、こちらも
具体的には、最終的に皇国の年間
それ自体はとても助かったと思っている。ただ、そのこととこれはまた別の話だ。
「そうですけど、謝罪をすれば許されるわけではありませんし、警戒は必要です…………私は、何かあったら相手を天の国に送りつけてすぐに戻ってきなさいと言われています」
これは、意訳すると、『相手をぶち殺して
そこで閣下は、もう
た。
「…………し、失礼。…………いえ、こちらも貴女が身の危険を感じた時、我が国の者に何をしても
「良かった…………」
この『良かった』は、それをこの方が……選帝侯ご本人がご存じなのであれば、間違いは起こるまいという安心から出たのではなく、それなら何をしても問題ないな、という
(私は、年金を失うような
「ご安心を。成人したばかりの聖女様に手を出すような
トン、と閣下は馬車の内だというのに
私は閣下のすべてを信じられるとは思っていないけれど、不思議とその言葉は信じられるような気がした。
「ありがとうございます。……私もいざという時は実力行使を
***
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