「史上最高の問題児」が、停学をくらった問題児を三人も弟子に取った!

 強くて賢くて弁も立って、ひとりで何でもできてしまう──独りで平気だからこそ、自分がちょっぴり孤独を感じていることに気付いていない、フリーランスの魔法使いアーチ。

 学生時代は「史上最高の問題児」と呼ばれた彼が今回受けた依頼は、母校で停学を命じられた三人の少年魔法使いを、停学期間中預かって鍛え直すこと。

 史上最高の問題児 × 三人の問題児達

 この構図だけでどうなってしまうのだろうとハラハラしますが、ストーリーは決してそれを裏切りません。師匠があんまりメチャクチャやるものだから、少年達がだんだん諌める側に回りだすくらいです。

 そんな楽しいやり取りが、テンポ良く色鮮やかな描写で描かれます。

 そう、何といってもこの作品の醍醐味は描写の巧みさです。

 「ローファンタジー」という言葉はきっとこの作品のためにあるのでしょう。異世界ではなく現代の英国を舞台としているからこその、リアルでカジュアルな心理描写。そしてキレイ過ぎない地に足のついた情景描写。

 ありがちな「金髪碧眼の皮を被った日本人」ではなく、ちゃんとキャラクター達もイギリス生まれのイギリス育ちだと感じられます。

 そしてそんな細部に魅了されながらも、物語はどんどん謎を深め、戦いは深刻に。そして問題児だとばかり思っていた弟子達は、師匠との絆をばねに才能を開花させてゆく──

 最後までワクワクが途切れない、上質なファンタジーです。ぜひご一読あれ!

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