最高に格好良くて、曲者だけど優しい魔法使いの師匠と弟子の魔法物語

 英国で唯一のフリーランス魔法使いのアーチボルト・ウルフはひょんなことから退学の危機に陥った三人の問題児たちの「師匠」になることに。
 何やら命を狙われているらしい彼らの事件に、彼自身も巻き込まれていき——?

 英国にある魔法学校を舞台に、へらず口と悪戯が身上の魔法使いの師匠と何やら事情を抱えた生徒三人組の魔法と冒険の物語です。

 鮮やかな魔法の描写、そして主人公アーチの魔法と物理のコンビネーションの力技(なんと武器はスーツケース!)で殴り倒していくスタイルにまず度肝を抜かれました。
 わくわくするような魔法に満ちた世界観に加え、何より魅力的なのは登場人物たち。主人公のアーチは暗い過去を抱えながらも、そのへらず口と次々開示される悪戯遍歴が、問題児と言われる弟子たちさえも唖然とさせるほど。

 それでも彼の「悪戯」にも理由があり、その根底にある優しさに気づいてしまえば、三人組を含め、読んでいる私自身も彼を好きにならずにはいられませんでした。
クールに見えて、弟子たちが迷ったり、危機に晒されたりした時に見せる彼の優しさと心の底からの言葉は、胸を打つものばかりです。
 そして、彼の弟子であるアーネスト、ダニエル、ヴィンセントもみんな個性的で、それぞれが抱える事情もありながら、やがて彼ら自身の存在がアーチにとっても救いになっていったように思えました。

 敵対する登場人物たちにもそれぞれ抱える事情や理由があり、こんがらがった優しさが時に仇になってしまうこともある——それでも、辛い出来事があっても、人は時に互いを支え合うことで乗り越えていける、そんな希望に満ちた素晴らしい物語でした。

 おすすめです!

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