第2話 マンティコアが暴れ出す

 ドアを開けて、家を出ようとしたら、頭がぶつかる。



 イッター! 私が大きくなってるから、いつもの通りに出たらダメよね。あー、イライラする。2階から目薬、隔靴掻痒かっかそうようだぜー!



 ドアを思いっきりバーンと閉めたら、ドアの表面がひしゃげてしまった。まるで2tトラックに衝突しょうとうした跡みたい。これ直さないと、大家さんに叱られるー。



 壁をつかんで屋上に上がる。赤い満月が光って、気持ちいい風が吹いている。頭が冷えてきたな。



「どうして、こんな姿になったの……」



 ザリガニの尾をつまんで、ため息一つ。この尻尾をよく見れば、先端が注射針みたいに鋭くなっている。これで誰か刺せば、死んじゃうかな。



「試したいなぁ。ハッ!」



 いつの間にか、脳の半分に、魔獣モンスターの針を誰かに刺したいという願望が湧きだしている。ダメよ、ダメダメ。絶対にダメなんだから。頭を激しく横に振って、その願望を振り払う。



「お酒お酒お酒、お酒を飲んだ―ら、頭頭頭が軽くーなるー」



 自分の鼻に酔っ払いの悪臭が入ってくる。普段は嫌いな臭いなのに、今は何故か好きで憧れてしまう。



「アノ男ダ!」



 野生の私が翼を開いて、酔っ払いのサラリーマン目がけて滑空かっくうしていく。やっ、やめて!



(続く)

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