第13話 アイス・ビースト爆誕!

「マンティコアか……。許せん! 私の車を臭くしやがって!」



 相須あいすの体はメラメラ燃え上がっている。あまり乗り気じゃない里佐土りさどは、彼を見てドン引きしている。



「なぁ。そのマン何たらを倒したら、お前はどうなるの?」


「オレ、マカイニカエレル。ココ、モウアキタ」


「なるほど! あなたが魔界に帰れるように協力しますよ! さぁ、私を何なりとモンスターに変えて下さい!」



 相須あいすはひれ伏して、悪魔のクマに忠誠を誓う。里佐土りさどは彼につられて、正座して頭を軽く下げる。



「ヨロシイ。オマエ、ドンナノニナリタイ?」


「そうですねぇ。出来れば、女の子人気があるもふもふモンスターになりたいです」


「ワカッタ。ババババッバーバババーバー!」



 悪魔のクマが手を振れば、相須の全身に電撃が走った。



 彼の両手はグローブのようにふくれ上がり、黒い肉球がまんじゅうのように出てくる。体中に白い毛が生え、腕はご神木のように太くなり、スーツがちぎれる。彼はマッスルポーズを作って笑顔を見せる。



 顔は丸みを帯び、黒ずんだ鼻が横に広がる。全ての歯が犬歯のように尖り、上の犬歯はさらに尖ってナイフのように突き出る。両耳は頭部に移り、三角形になる。彼は舌を上に伸ばして、鼻の感触を確かめる。



 両足はビールだるのように太く丸くなる。白い腹は運動会の大玉のように太く横に広がった。尻尾はポンポンみたいに白くフワフワしたものだ。今の相須あいすの見た目は、相撲力士体型のホッキョクグマだ。彼の腹を触った里佐土りさどは、人をだめにするソファを思い出した。



 だが、変化はまだ終わらない。頭にトナカイのように枝分かれした角、肩に鳥よけの突起のような氷柱つららが生える。



「オマエ、アイス・ビーストナ」


「アイス・ビースト? おおおお、何だか、物凄ものすごく周りを凍らせてみたい!」



 彼が壁に向かって息を吹きかければ、氷づけになった。次に床に向かって息を吐くと、一面スケートリンクに変わる。大きな黒目の可愛いクマ顔から想像できない、えげつない能力だ。



「おおお。先生、可愛くて強いって最強じゃん」


「ガハハハハハ。里佐土りさど君も理想のモンスターになるがいい」



 アイス・ビーストは腹太鼓はらだいこを鳴らして上機嫌じょうきげんだ。



「うーん。俺はどうすっかなー」



 彼は首をかしげて考えこむ。

(続く)

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