フランスから届く、玉虫色に輝く言の羽

フランス在住の作者が、日常生活の風景や感じたことを綴っているエッセイです。
パリ市の標語である「たゆたえども、沈まず」
パリの夕暮れを表現した「犬とオオカミの間」
フランス的桜の鑑賞と日本的桜の想いを綴った「フランスの桜、日本の桜」
フランスにお住いの作者だからこそ語れる上記のような作品もあれば、やるせない気持ちや寂寥感、浮き沈みする心を言葉にした作品も繊細な感性で描かれています。そのどれもが色鮮やかでバラエティーにとんでいます。
知的で美しい表現。季節や空を鮮やかに切り取った言葉たち。風景描写と心がリンクした詩。真面目に語っているのに毒っ気たっぷりのユニークさ。くすくす笑ってしまう、そっと差し込まれた小ネタ。
フランスという土地柄や雰囲気を楽しむだけのエッセイではないと、読み進めるうちに気づくはず。

古今和歌集、紀貫之。
「やまとうたは、人の心を種として、万の言の葉とぞなれりける」
(和歌は、人の心を種として、葉っぱのように生い茂っている言の葉である)

日本とフランスを両方知る作者の心で育った種が言葉となり、羽となってわたしたちの手元に届く。
遠く離れている人の言葉や想いにふれられるのもカクヨムの楽しみですね。

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