第12話

「ごめんな」

再びの謝罪。

しかし、もう私は動じない。

だが、一つ疑問が残る。


もし、彼のその言葉が朱音を選んだこと。

そのことに対する謝罪なのだとしたら。


彼は…朱音のことを覚えている?


「真波、ごめんな」

「…ねえ」


なに返事してる。まだ心を許すな。油断するな。

しかし、開きかけた私の口は止まらない。


「ごめんって、どういう意味?」

「…え、え、え」

不完全な彼が、濁った声を壊れたように繰り返す。


突如、私を襲う激痛。


「う、ぐうううう」

思念のゆがみ。そのダメージが私を襲う。


私は手のひらを胸に当てながら、ゆっくりと呼吸を繰り返す。


「はあ、はあ」

油断した。会話すらも脳にダメージを与えることを。

まだ、未完成である思念体の彼とは脳が直接リンクしているのだ。

彼が動揺すれば、私にも害が及ぶ。


「わ、か、ら、な、い」

「え?」

「お、もい、だ、せな、い。だけ、ど。ごめ、ん」

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