第11話
私はその説明を脳裏に焼き付けた。
いや、焼き付けられていた。
研究の中で、幾度となく『失敗』する被検体を数えきれないほどに見てきたからだ。
特に、『人』の創造に失敗した者の末路は語るのも憚られる。
創造中の人間というのは、たんぱく質の塊だ。
ぶくぶくと泡立つ肌色の肉塊に、全身を滴る深紅の液体。
ばらばらに配置された目や耳。
それだけならばまだよい。
しかし、彼らは時間が経つにつれ意思を持つようになる。
そして語り掛けてくるのだ。
甘く、妖しい言霊を。
振り返った人間は、その姿を、自分が最も欲する人間の醜体を目の当たりにしたその瞬間から、人でなくなる。
文字通りの『廃人』。
うわ言のようにぶつぶつと意味のない言葉を呟き続ける肉塊をいくつ処理したか、私はもう覚えていない。
だから、私は覚悟していた。
その時間を。
謙也が私に語り掛けてくる、その瞬間を。
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