第7話
――ごめんな。
脳裏にへばりついたその言葉を私はなんども反芻する。
それはどういう意味なのか。
私は問い質したかった。
けれどそれはできなかった。
再び、手元に握られた瓶を見つめると、くるりと180度回転させる。
表紙の反対には、この薬の効果が書かれたラベルが貼られている。
私は自分に戒めるようにその説明を改めて念入りに見返した。
●使用方法
以下の表に記載された分量だけ服用ください。
・0歳~10歳:1錠
・10歳~20歳 :2錠
・20歳~ :4錠
●効果
・当薬を服用後、1時間後にあなたの最も望むものが一つだけ
現実に生成されます。
例:宝石、車、構築物(マンション等)、人
●注意事項
この薬は
そこまで読んで、私はふっと笑った。
「効果」の欄にあまりにさりげなく書かれた「人」という一文字。
倫理というものをあまりに平然と無視するこの薬に思わず失笑する。
しかし、では。
その薬にすがった私は一体何者なのだろうか。
そう、私はこの薬にすがった。
だから今、後ろにいる謙也はもうあの頃の謙也ではない。
私の…理想の謙也だ。
私だけを見て、私だけを愛する、理想の謙也。
彼女の記憶だけを失った、理想の謙也だ。
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