そして君は振り返った

黒猫B

第1話

「真波」


後ろから、私の名を呼ぶ声がした。

しかし、私は振り返らない。


もちろん、振り返りたくて仕方ない。

早く彼の顔を見たい。

でも、振り返ってはダメなのだ。


私は手元に握られた1本の瓶を見つめる。

ゴシック体の5文字の漢字が、無機質に刻まれた茶色い瓶。

その中には白い錠剤が入れられていた。


それは、私が開発した魔法の薬。


腕時計をちらりと見ると、時刻は11時50分。

もう間もなく完成だ。


「真波」

再び、彼の声。


そう。

今、私の後ろには、大好きだった彼がいる。

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