SS 彼の苦悩・彼女の策略
今度こそSSです。てかSSってこんな感じでいいんですよね? 実はSSの定義も碌に知らずに書いてたりします。
☆☆☆☆☆
「マジかー……」
ブラウザも閉じずにベッドに放り投げられたスマホには、
『親友だと思っていた男友達から告白されました。どうしたらいいでしょう』
と、なんちゃら質問箱の投稿が映し出されたままでバックライトの光を放っていた。
「そんなん知らんがな」
はー、と溜め息を吐きながら気怠げに目を閉じる。
見ようと思って見たページでもない筈ではあるけれど、ついリンクをタップしちゃって……つまりは気になって見ちゃって勝手に凹んだのだ。
『男女間の友情は成立するのか』
この普遍的なテーマは思春期の通過儀礼みたなもので、自分自身であったり友人や仲間の話であったりと、直接間接の違いや程度差こそあれど誰もが皆経験するものだと思っている。議論にもなったりするようだけど、まー結論は出ないんじゃないかな。
なんでこんな事が気になっちゃってるかと言うと
『幼馴染の唯を異性として意識しちゃってる?』モードの第二波が到来しちゃったから。
幼馴染とは言え、子供の頃に一緒に風呂に入ったなんて思い出はない。幼稚園の頃ビニールプールに一緒に入ったのが精々だ。あの頃の女の子の水着のブラって何を隠すのだろう?と言う疑問はさておき俺と唯は幼馴染なのか?との別の疑問が頭に浮かぶ。
遊び仲間の友人によれば幼馴染とは、
「家が隣同士か極近所」
「お互いの部屋の窓が向かい合ってればなお良し(ラッキースケベ的にも)」
「親同士が仲が良い」
「幼い頃は一緒に風呂に入ってた」
「よく一緒に昼寝をしてた」
「朝、自室まで起こしにくる」
「幼い頃に結婚の約束をしている(但し、男の方は覚えてない)」
との厳しい定義があるらしいが、コイツは情報の
今度『妹とは』と尋ねてみようかと興味本位で思ったが、それはやめておこう。更に面倒くさい答えが返って来そうな気がするので。
幼稚園の時一緒に遊んでた唯と俺は幼馴染?小中一緒で高校から別になった奴ってどうなんだろう?これも男女間の友情問題同様人によって意見が分かれそうだ。
唯とは現在の大学まで学校はずっと一緒だ。幼稚園の時と小学生まではそこそこ仲良かったと思う。
中学生の時は別なクラスだったしそれぞれ同性のグループで遊ぶようになったりとで、たまに廊下ですれ違った時に目であいさつする程度だったりと若干疎遠になったのだが、委員会とかで会った時に苗字で呼ばれた時は軽くショックで、更に距離を感じたのは鮮烈に記憶に残っている。
高校も一緒っちゃ一緒だけど、都市部でもないこの辺りで進学校となると
そんな自然消滅的幼馴染である唯と再び接点が出来たのは、
俺も唯も同じ志望校同士の奴に誘われてて、集合場所の駅に行ってみたら俺と唯だけ。それぞれ友人に連絡を取ってみると「志望校を変えた」だの「急用ができた」だのだった。いや連絡くらいは出来るよね?
折角だからと二人で行くことになった電車の中は、それはそれはめっちゃ気まずかった。唯は微妙に席を半分だけ空けて座るし、小学生までは仲良く話してた筈なのに何を話していいのかさっぱり。
それでも大学に着いて共通の話題が出来てからは、段々と昔の雰囲気に戻ってきていつの間にか名前呼びに戻ってたし、帰りの電車では席を空けることなく唯は普通に隣に座った。
それどころか俺の肩に頭を預けて寝てしまい「ふっ、疲れちゃったんだな」とあどけない寝顔を見ながら体を動かさないようにしてて……なんてベタな展開こそなかったが、それでも別れ際にチャットアプリのIDを交換するくらいにはお互いに楽しかったんだとは思う。
この時のが『幼馴染の唯を異性として意識しちゃってる?』モードの第一波。
小さい頃から可愛いかった唯が中学あたりからは男子から人気が出始め、唯に告白をした男子の話が耳に入るようになって来た。
それは高校に入って数を増すようになる訳だけど、OKを貰えなかったと聞くたびになぜかホッとしたり、なぜあんなに可愛いのに誰とも付き合わないんだろうと疑問に思ったりもしていた。
そんな唯に対して自分はなんの取り得もないし、今まで唯に告白した奴らでさえ断られてんだからと第一波の時は自ら距離を置いた。
その後お互いに大学に合格し、入学後暫くした頃サークルに一緒に入ろうと唯に誘われた。
環境も変わったしまぁいいかと一緒に入ったのだが、そこで俺と唯は彼氏彼女なのだろうと周りから思われてる節がある。
アウトドア系のサークルなのだがガチなヤツじゃなくて所謂飲みサーに近い系。お互いに名前呼びだわ一緒に来て一緒に帰ったら普通そう思うよね。俺でもそんな二人がいたらそう思うし。
おかげで折角可愛い女子の後輩が入ったのにって先輩からの当たりがキツイ。
若干の後ろめたさを感じてる俺とは違い唯は「男除けにちょうどいい」とお気楽だ。
あー久しぶりにアキ兄(唯がそう呼ぶので俺もそう呼んでる)に会って相談でもしてみるか……と、思ったけど止めた。
くるみちゃん(唯が……以下略。でも最近は本人に面と向かってそう呼ぶのは恥ずかしくなって来てるのだが)に高確率で伝わる気がする。
頼めば内緒にしてくれそうではあるけど、あの二人の仲良さは尋常じゃないからな。今は結婚して一緒に住んでる訳だし、そんなアキ兄に唯の事を相談するのはリスクが高過ぎる。うっかり本人に伝わったら顔の熱さで死ねる自信がある。
ベッドに放り投げたスマホを拾いながら自らもベッドに横になり「幼馴染 恋愛」と検索しようとして我に返る。
アホらし、ともう一度スマホを放ろうとしたら、
チロリロリン♪
ロックも解除せずに画面を見ると、
「家に居る~?」
アプリを開かなくても確認できる程度のメッセージが唯から来た。
「居る」
とだけ返信すると、イヒヒと笑う何かの動物のキャラがスタンプで添えられて、
「だと思った。どうせ暇してたんでしょ?」
「余計なお世話だ」
とぶっきらぼうに対応してたら
「ねーねー、これから教習所に行かない?あそこってカップルだと一緒に教習受けれたりできるって、前にくるみちゃんが言ってたじゃん?ウチらもカップルって事で一緒に入校しに行こうよ」
ガリガリと頭を掻き「人も気も知らねーで」と毒づくも、無意識に口元がにやつくのを感じながらベッドから起き上がるのであった。
☆☆☆☆☆
今回のテーマは『野々原の家系は美女揃い』です。
あっホントは違いますよ。
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