黄金卿の章―― 鉄血戦線 其の②
「アリス。さっき渡したやつは後何個残ってる?」
「――ッ えっと……後三個ぐらいですかね。それよりもヤバいですよ、この子ホントに銃弾効かないじゃないですか。流石にこれでは持ちませんよぉ!」
「そうか。アリス、お前はデップをやれ。こっちはオレ一人で何とかしてやる」
「――何言ってるんですか!いくらジャンクさんが強くても、こんなの一方的にやられるに決まってますよ。いい大人なんだから、勇気と蛮勇をはき違えないでください」
珍しく本気で心配してくるな、コイツ。そんなアリスを尻目にザッシュは大きく肩を竦めると、大げさに首を振って見せた。
「――はっ! オレがお前の前で一度でもピンチになったことがあったか?『あの時』だって、オレは華麗にやりきれてただろ?心配し過ぎだバカ野郎。まぁ見とけや、オレがあの戦闘玩具を木っ端微塵にするところをよ」
アリスの口撃を受ける前にそれだけを早口で言い切ると、ザッシュは右腕に全神経を集中させる。
『右腕』が轟音をかき鳴らせ、同時に激しく胎動し始めた。
「うん!?なんなんだあれは――ジュタイラーよ、一刻も早くあの男を殺しなさい!彼は危険だァ!」
デップの咆哮に釣られ、ジュタイラーが不気味なうめき声のようなものを発し、ザッシュに襲い掛かってくる。
◇『――
ジュタイラーの攻撃が眼前へ迫る瞬間。通路内に衝撃と電光が走った。
(なんとか、間に合ったぜ。形状変化までに時間がかかるのがこいつの難点だな)
ザッシュの右腕――だった物は、今や右腕に留まらず彼の全身を隈なく覆い、強固な鎧へと化していく。その姿は何処か遥か東に存在する島国の兵士が着ていた鎧甲冑に酷似している。
「さてと、塵掃除の時間だ。粉砕してスクラップ送りにしてやる」
甲冑がカタカタと不気味な笑い声の様な音を発し、武装を回転させながら更なる変化を齎していく。
両腕肘は一対の硬質化ブレードが生え、鎧の隙間は
その姿はまさしく全身凶器そのもの。ザッシュの体は無数の剣で出来ていた。
「悪いが遊んでいる時間もないんでね。速攻でカタをつけさせてもらうぜ」
前方に伸びたハサミ状の触手を右腕で一刀両断。すかさず左腕の横薙ぎで二本生えた右腕を巻き込み破壊。背後から襲い掛かる先が5本に分かれた
「おっと……おいおい。そりゃ甘すぎじゃねぇか? いつ、オレが、
◇『
鎧の隙間に敷き詰められていた小剣が
直後、ザッシュを覆っていた鎧は火花を散らせながら煙を吐き出したかと思うと、けたたましい音を鳴らしながらその武品は雲散霧消していった。そして瞬く間に彼の右腕にはいつもの見慣れた錆色のものへと変わっていた。
(やはり、もって3分ってとこか。まだまだ使いこなせねぇな、コレは)
熱気により額から大粒の汗を滲ませながら、ザッシュは心中でポツリと零す。
「――バ、バカな……! ワタクシの最高傑作がァ……!?」
「ヘッ、調教に失敗でもしたか?ピエロ野郎」
愛機を喪ってひどく狼狽するデップを見上げながら、ザッシュは満足気にニヒルな笑みを浮かべた。――その時であった。
「――ウフフ。それまでよ――ザッシュ」
ザッシュが、おそらくは奮闘していただろうアリスの方を振り返ろうとした瞬間。
彼の背中に針で刺すような痛みと肉が焼き焦げる音が奔った。誰だこんなことをしやがる奴は……
いや。誰かなど声で分かっていた。こいつは――
「――イザラ、どうしてオレを裏切った……?」
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