黄金卿の章―― 黄金の鋼鉄城 其の①
「……う……ん。――此処は? ウッ!なに……これ」
アリスは眩い光の中、微睡より目覚めた。そして自身の置かれた状況に驚愕する。
辺りを見渡すと大量の死体が機械群に繋がれており、かつて『人』だったモノの残骸が部屋のあちこちに転がっていた。
思わず、口を手で押さえそうになるが、本来あるべきところに腕がないことに気付く。どうやら頭上で両腕を縛り上げられているようだ。
「うーん本格的にピンチな予感。いや、アリス。逆に考えるのよ。この状況こそまさしくわたしの求めていたもの。きっと『囚われのお姫様』よろしくザッシュさんが颯爽と助けにきてくれるはず……多分」
「――ほほう。この状況にしては中々メンタリティーがストローングな嬢ちゃんじゃね」
アリスが頭の中で花畑を走っていると、彼女の後頭部の付近よりしゃがれた声が聞こえてきた。そして、声の持ち主は含み笑いの様な息を洩らしつつアリスの前に姿を現す。そこにいたのは、両目に奇妙な銀のゴーグルを填め、頭に赤いカウボーイハットを被った、アロハシャツが存在感を煽る小さくてファンキーな老人だった。
「……おじいさん、誰ですか」
「わしか?わしはハーティマス・クルソー。ここの連中からは『怪造博士』と呼ばれておるよ」
「……ふーん、そっかあ。そんなことよりもこれを解いてくださいな」
「……この状況でわしに指図するとは、滅茶苦茶肝が据わっておるのー。気に入ったわ!」
決め顔で自己紹介したハーティマスを華麗に受け流すと、アリスは頭上に目を向け図々しくも彼に指示した。そんな生意気な少女を目にしたハーティマスは豪快に笑うと彼女の手に付けられた拘束具を外した。
「うん、ありがとおじいさん。ところでこの陰気な場所は一体何処でしょうか?」
「ここは『
「
アリスは先の戦闘で戦った半機械の怪物のことを思い出していた。あんな化物がこんなにもいるなんて。アリスはうすら寒い感情を隠せなかった。
「まぁ、死体の兵士などわしはあんまり好かんがな。やはり機械は生命力溢れるものに使われてこそなんぼじゃろ。その点あの男は魅力的じゃったな。確か……ザッシュだったか。死んじまったのがちと惜しいわ」
「……で……ません」
「うむ?」
「ザッシュさんは死んでません!あの人は無敵なんです。そうですよ今は何処かで道草でも食べてるんですよ。きっとそうです。そのうちすっごい作戦とか考えてわたしを助けに来るんです、絶対です!」
突然大声を張り上げたアリスにハーティマスは目を見開いた。そして頬を二回ほど掻くとばつが悪そうに彼女に頭を下げた。
「そうか……あの青年は嬢ちゃんにとっての……すまん、気を悪くさせたな」
「……いえ。わたしこそすいません。少し感情的になっちゃいました」
暫く、気まずい沈黙が流れる。その均衡を最初に破ったのはアリスだった。
「そういえば、おじいさんは中々良い人なのに、なんでこんなとこで働いているんですか?」
「……ああ、それはな――」
ハーティマスが口を開いたのとほぼ同時に天井に吊るされた真鍮色のスピーカーがグリーンに発光し、そこから歪な機械音が流れてきた。
『ハーティマス並ビニ人質ノ少女。黄金卿ガヲ呼ビデアル。至急セントラル迄来タレシ』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます