世界観の魔術師が紡ぐ、美しい《御伽噺話》

名前に縛られない梟と《瞳の魔女》太陽の残滓が浮遊し続ける銀河の空とそれらの輝きが吸いこまれていく《銀色が帰る森》……魔女によって文房具に変えられるひとびと、無自覚の《罪悪》……
これほどまでにどきどきする造語の数々を産みだし、なおかつ物語に落としこめるなんて――この物語の著者は間違いなく、世界観の魔術師です。
破天荒な設定の数々がただのギミックではなく、寓意と読者にたいする問い掛けを含んで機能しているのが、ほんとうに凄い。圧巻です。

お伽噺のようなふんいきに哲学の馨りを漂わせた素晴らしい世界観に、呼吸をするのも惜しいほどに読みふけってしまいました。

ペシミスティックでありながら何処か可愛らしい《瞳の魔女》と、純真無垢な《魔女の弟子》の関係もなんともいえず、最後に暖かな余韻を残してくれます。果たして彼女は彼女のどこにキスをしたのか、想像が膨らみすぎてこまりますね。

ほんとうにおすすめの短編です。
是非とも漫画化したものを拝読したいものですね。

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