冒頭から引きずり込まれてゆく……

この面白さは何だろう。
掴みどころがないのだけれど、同時に掴みどころだらけなのだ。

冒頭の面白さに気づいた人も多いと思う。
梟視点なのだけれど、彼は実によく見ている。
そして散りばめられている謎。

瞳の魔女、太陽の残滓、銀色がかえる森……

全てが何だろうとのめり込んでいくように言葉が並んで行く。
もうこの時点で心を掴まれてしまい、先を知りたくなるのだ。

村人達は瞳の魔女にお願い事をしにやってくるのだけど、いつも文房具にかけられてしまう。
なぜに文房具?
そこに何の意味があるのか知りたくなる。

でもある少女だけは文房具に変えられる事なく弟子になる。
なぜ彼女だけは文房具に変えられなかったのか……ここにも意味がある。
一つ一つの伏線を丁寧に置いてあり、読み進めると理由がわかる。
でもその理由もストレートにわかるものと考えるものがあって、そのために二度三度読みたくなるのだ。
こうかもしれないと自分なりに理由をつけて再度読むと……また違う印象になる。

こんなことってあるんだと自分の中でも驚いたり。
面白さを感じる物語であり、スッキリする物語であり、深い物語でもある。

読む人それぞれの感じ方が違うというのもまた面白いところで……
同じ人が読んでも、その時の心のありようで別なものが見えてくる気がする。

これは凄い!本当にそう思った。
物語の中にちゃんと哲学もあって、感じ取ると見えてくるものが更に深くなる気がしている。

いい物語を読んだ。
これもまた、二度三度よむのだろうな。

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