青い海、白い砂浜。カリブの都で歌われる命の賛歌

タイトルにある「コカ」はコカインの原料となる中南米の栽培植物。ちょっと妖しさのある舞台を背景に、運命的な恋が描かれるお話です。

中心となる人物のマカレーナは娼婦ですが、彼女に日陰の女という言葉は似合いません。太陽の下で咲き誇る花のように人を魅了してやまないマカレーナと周囲の人間関係を描く筆致は濃密で、熱気や汗の匂いまで伝わってきそう。

恋愛と並行して描かれる麻薬カルテルの抗争が圧巻。散っていく男たちも熱くてかっこいいのが本作の魅力のひとつです。

登場人物の不器用で泥臭い生き様に胸が熱くなりました。全員が魅力的ですが、きっと読者それぞれに推しがいるのでは。

幕間のコラムが楽しく、中南米という私たちには馴染みの薄い舞台を少しでも親しみのあるものにしてくれようとする作者様の心遣いも嬉しい。

ラストでわかるタイトルの秀逸さ。
読み終わったあとはいつまでも余韻が残る。

全力でお勧めしたいカクヨム屈指の名作です。重厚な筆致に身を任せつつ、カリブの熱気に酔いしれて下さい。

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