硝煙や香水の匂いまで漂ってきそうな、異国の異色の物語。

 舞台は南米、タイトルにもあるようにカリブ海を臨むとある国。
 「コカ畑」のコカとは、セレブたちのパーティドラッグとして、またレクリエーションドラッグとして、欧米では大麻に次いで消費されている、コカインの原料となる常緑低木樹である。

 そのコカの一大産地である国を舞台に、本作にはカルテルのリーダーや、美しい娼館の女王や、その名のごとく天使のように純朴な青年や、複雑な過去を持つ、ある問題を抱えた少女など、たくさんのキャラクターが登場する。麻薬カルテルの抗争や、娼婦たちの生き様や、淡い恋とオトナの関係、警察とのあれやこれやなどが、現地の空気を感じられる生々しさで丹念に描かれている。
 登場する人物たちは活き活きとしていて、みな魅力的だ。一人ひとりに物語があり、それが物語全体に奥行きと重みを持たせているのである。
 読んでいるといつの間にか物語の中に入り込み、カリブの強い陽差しに汗ばみ、吹く風の中に女たちの香水や、硝煙の匂いが漂ってくるのを感じる気がする。こんな小説にはここカクヨムでも他でも、滅多に出会えることはないだろう。
 ものすごくお薦めなので、ぜひ読んでみてほしい。

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