もう、なんて云ったらいいんだろう。結論から云うと、理屈抜きに大好きな、憧れの文章である。
私もこういうものが書きたかった。まるでジム・キャロルみたいな、ぎりぎりのところで足掻いている、流れている血の臭いまでしそうな美しい文章。びっしりと畳み掛けるように文字は詰まっているのに、きちんとリズムがあってすらすらと読みやすく、胸に迫ってくる詩的な文章。
小手先でこういったものが書ける人はたくさんいるのかもしれないが、肚の底から吐きだされているようなこの感じは若いうちじゃないと書けないのかもしれないな、なんて思った。ロックに似ているかもしれない。フラストレーションや反骨精神がなければ本物のロックじゃない、みたいな、あれだ。少なくとも私には、もうどんなことにも驚きもせず失望もせず、ただ静かに眺めていられる歳になった私には、たとえ神様が文才を一日だけレンタルしてくれたとしても、もう書けないだろう。
期待して失望して、足掻いた挙げ句に行き着いた先で。もうこうするしかなかった「私」の起こした『惨劇』の炎に巻かれ、私もあの頃の熱さを思いだしたいと感じた。
貴方も、是非。