主人公は、とある特殊能力を持った殺し屋です。
彼は、世界各地をまたにかけて活動していますが、今回の舞台はブラジル。どういうミッションを遂行するのか……に注目したいところですが、やはりこのシリーズの見どころは、仕事に行くまでの道中とその帰りにある旅のお話でしょう。
出てくる料理がとにかく沢山。主人公は出てくる食事の美味しさについつい惹かれて、いつも満腹になっていましたが、これまた作者さんの巧みな文章表現のお陰で、まるでこちらも食べているかのようになり、読んでいるだけでお腹いっぱいになってしまいそうでした。
またこのお話では、主人公が旅をしている様子を読者の私たちが見ているように描かれていますが、時折、その土地の文化や歴史なども語ってくれるのが、とても興味深いです。
犯罪都市と言われるサンパウロの地下鉄のことや日本人街がある「ジャポン・リベルダージ駅」のこと、成人した人の多くがしている刺青の話――……。その地のことを良く知らなければ書けないことであり、知らない人にとっては新鮮な内容だと思います。
旅気分を味わいたい方や、ブラジルという国を知りたい方にぴったりの作品です。
気になる方は、読んでみてはいかがでしょうか。
特殊な能力を持つがゆえに殺し屋稼業を担う主人公。今回の任地はブラジル。
日本からは遠い国でありながら、読み進めるほどに親近感を感じ、より踏み込んで知りたくなるエピソードは、滴るような漢字と肉汁と色彩に彩られています。
全体として素材、そして本質に切り込むような、肉を切って骨格を確かめ探るような奥深さを感じました。日本とブラジルの関係、違い、学ぶべき点……
時間の流れはゆったりと、でも過ぎてみればあっという間の旅から戻ったような感覚が読後に残ります。電車に揺られて移動するエピソードが特に好き。
そして上質だからこそシンプルに楽しめる肉料理、極甘スイーツを堪能しつつ、肉体的にも精神的にもハードな仕事をこなす主人公。
海外の国の有り様、人々や文化の違いに対する深い造詣は、その生き方によって知らずに磨かれているのかもしれません。一言でいえば格好いいのです。
次の任地はどこになるのだろうと、楽しみで仕方ありません。
もちろん「殺し屋」としての仕事はない方が良いのですが、この方の目線で、人が各地で静かに着実に築き上げている文化を、暮らしを、垣間見たいと望まずにはいられません。
世界をまたにかける殺し屋さん日記のブラジル編です。たった一週間の滞在ながら、その内容は濃く深く、まるで旅に同伴させてもらっているような気分になります。
今回の目玉はグルメレポートの充実ぶり。肉料理が大好きな方にはヨダレもののご馳走がたくさん登場します。お腹を空かせて読むのはご注意ですよ。
多種多様なルーツを持つブラジルの文化についてのお話もとても興味深いです。日本人にも大きくかかわりのあるこの国をさらに知ることができ、同時にどんな人間でも取り込んでしまうこの国の器の大きさを感じます。
市街地の様子、酒場の人々、その横に広がるたくましい自然の姿。ブラジルの魅力がいっぱい詰まっています。
前回のトルコ編とも併せて、好奇心を刺激する素敵な旅エッセイです。
殺し屋さんによる、世界を翔ける旅日記。トルコ編に続いて、今度はブラジル編です!
ブラジルと言うと、日系人のたどった歴史。サッカー。カーニバル。
たくさんの魅力的な風景に、歴史に思いを馳せながら、ブラジル紀行は続きます。
どこまでも無限に続く肉。食べても食べてもテーブルから無くならない肉。極甘デザートにコーヒー。さらに肉。
読んでいてお腹いっぱいになってきますが、それもまた至福。
殺し屋としての仕事に向き合って考える、人々の悲しい生き方。
さまざまな人種がひしめいて作り上げる、混沌としていても美しい、さまざまな文化。
たくさんの大事なことを、殺し屋さんの目を通して考えさせられます。
旅行もままならない今だからこそ、この作品を読んで海外へ!広い世界へ!
一緒に、楽しく遠くまで飛んでみませんか。
殺し屋さんの旅日記第2段。
今回は地球の裏側・ブラジルの旅です。
移民によって発展してきたこの国に、日系人が多いことはご承知の通り。
そうした歴史から成る文化のあり様が紹介されると共に、それを受けて我々の中にある偏見や差別意識にまで考察が及んでおり、たいへん考えさせられました。
もちろん、ブラジルのグルメも盛りだくさん。豪快な肉の描写は圧巻です!
お酒の紹介もありましたので、お好きな方にはたまらないでしょう。
日本とは違う気候や時間の流れ、空気感まで伝わってくる旅日記。
殺し屋さんの特殊なお仕事の様子や死生観、達観した古風な語り口も健在です。
ステイホームが続く時期、これを読んでブラジル旅行気分を味わいましょう!
グルメ、ときどきお仕事(殺し)という一風変わった旅行記、今度は南米大陸のブラジル。
異国情緒とおいしそうな料理で楽しませてくれたトルコ編に続く第二弾です。今回も期待を裏切りません。ブラジルといえばサッカー、リオのカーニバル、コーヒーなどが思い浮かびますが、実はお肉グルメの国でもあると本作で知りました。殺し屋の前に並ぶ肉肉肉! 肉汁の海で溺れてみたいならぜひ一読を。私はすぐにでもブラジルに飛んでいきたくなりました。
こだわり抜いた古風な語り口は前作そのまま。殺し屋さん、食後のスイーツを贖罪と呼ぶお茶目な一面も見せてくれます。そして今回も仕事を完遂。
普通の観光旅行では味わえない深部ものぞいた気分にさせてくれる一作です。行ってみたい国がまたひとつ増えました。
エッセイ・ノンフィクションだけど殺し屋の日記。なんとも不思議な旅とグルメのエッセイ、第二弾である。
作者・久里 琳さんのあまり目にしたことのない漢字を使った、古風で硬い文体が、語り手である殺し屋のキャラクターを一層魅力あるものに見せている。まるで侍のような、生真面目で人を殺すことを生業にしているとは思えないような静謐さを感じる殺し屋は、「仕事」を済ませるたびに罰として、苦手である甘いものを食すことを己に課す。そういうところがなんだかおもしろみがあって、ますます魅力的だ。
甘いものだけではなく、その土地で食べられているグルメについても語られるのだが、これも非常に興味深い。日本でも昨今はありとあらゆる世界のグルメが食べられるとはいえ、第一弾で紹介されたトルコ料理や、今作のブラジル料理などはやはりまだあまり知られていないと思われる。私も、ブラジルを代表する国民食らしいフェイジョアーダすら知らなかった。他にも見たことも聞いたこともない料理がボリュームたっぷりに登場する。
タイトル通り、移動中の車窓から見える景色などの描写も素晴らしい。というか、これがメインと云っていいかもしれない。観光案内サイトなどでは決して見られない、鄙びた景色の描写は、まるで一枚の絵画のように感動を呼ぶ。もはや芸術的と云っていいほどの、惚れ惚れとする風格漂う筆致である。
今回の旅はまだ始まったばかり。ぜひ多くの人に、魅力的な殺し屋と同じ列車に乗り合わせてほしい。