第5話 縁談
「縁談? 私にですか?」
朝から
「ゆくゆくは、と言う事だ。何も今すぐにと言う話でもない」
「でも私は……」
「お前の事情を知って、それでも妻にと望んでいる」
記憶に残る父としての
「もっとも無理強いするつもりはない。お前が嫌だと思えば断ることも出来る」
そう告げた
「だがお前も少なからず好意を持つ相手だろう。まずはお互いに話し合ってみるといい」
「そのお相手というのは……」
***
母屋の縁側で
「急な話で驚かれたでしょう? すみません。
そこまで言ってしまってから、青年――
「新しい本を持って来ました。どうぞ」
「ありがとうございます」
包みを受け取る
「
正面から問われるとは思ってもみなかった
「実は僕……ずっとお嬢様をお慕いしていたんですよ。
「でも、私は……私では、きっとご迷惑をおかけします」
「病床の貴女を見て、助けたいと思いました」
声音は静かに、けれど綴る言葉に一片の揺らぎもない。真摯な瞳はどこまでも真っ直ぐに、嘘偽りのない心を乗せて
「貴女を傷付ける全てのものから、貴女を守りたいと思ったんです」
「……
「急がなくてもいい。ただ少しだけ、お互いもう一歩近付いてみませんか?」
優しい微笑みに、
否定も肯定もしない。ただ曖昧に視線を揺らす
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